2024年12月13日
「技術・人文・国際」―もっとも取得者の多い就労ビザ―
本ページで紹介する技術・人文知識・国際業務ビザ (技人国ビザ) は、様々な就労ビザの中でも取得者が大変多い、もっともポピュラーなビザです。
技人国ビザは、主に大学や専門学校などで学んだ専門知識を活かしたオフィスワークが該当します。
技人国ビザで従事できる仕事の例
以下は技人国ビザに当てはまる仕事の具体例ですが、理系・文系を問わず幅広い職種が技人国ビザに該当します。
・システムエンジニア, プログラマーなどIT関連の技術者
・機械工学などの技術者 ・機械,システムなどの設計者
・建築,土木などの設計者
・通訳,翻訳,語学指導(一般企業が営む英会話学校など)
・貿易業務,渉外業務
・営業 ・企画 ・商品開発
・マーケティング ・コンサルティング
・広告,経理 ,人事,総務,法務,海外取引
・ファッションデザイナー
・建築家 ・室内装飾デザイナー など
上記の例では、社内の事務方から企画・マーケティング、営業といった売り上げにかかわる職種、IT技術者や建築家、デザイナーといった専門職まで多様な業務が含まれています。
しかし、これらのような専門知識を活かしたオフィスワークであっても、別途対応する在留資格がある活動、「教授」、「芸術」、「報道」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」、「興行」に該当する活動は除かれます。
例えば、実際に授業を行う外国人の申請人(外国人) が、民間のスクールではなく公教育の現場で教える場合、該当する在留資格は「教育」となります。仮にまったく同じ内容を教えるとしても、国内の小中学校や高等学校、専門学校等で教師を務める場合は、より活動範囲が限定的な「教育」ビザが優先されるというわけです。
もう一つ別の観点から考えてみましょう。従業員のほとんどを外国籍の人が占める英会話スクールがあったとします。経営を行う外国人の方は「経営・管理」ビザとなり、スクール運営の実務を担う事務スタッフや実際に授業を行っているスタッフは「技術・人文知識・国際業務」ビザがそれぞれ該当する在留資格になります。
つまり、同一の職種でも属する組織によって、また、同一の職場でも職務内容や専門性によって、必要となる就労資格は異なってきます。
【図解:就労ビザ全体の中での技人国ビザの位置づけ】
技人国ビザの在留期間
各在留資格にはそれぞれ滞在できる期間が定められていますが、「技術・人文知識・国際業務」ビザ』の場合の在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかとなります。
これらの期間は、在留資格の申請書を提出する際に 「滞在予定期間」 (変更申請や更新申請では「希望する在留期間」)を記入することで希望を出せます。しかし許可される滞在期間は入国管理局の裁量による部分が大きいため、記入した滞在期間がそのまま許可されるとは限りません。
初回の申請で最長である5年間の在留可能期間が認められるケースは少なく、一般的には、初回申請では1年間の滞在期間が許可されることが多いです。ただ、上場して広く知られている企業や、大規模な組織が招聘機関である場合は、初回でも5年の許可が下りるケースがあります。
技術・人文知識・国際業務ビザを取得するには
外国籍の人が日本で技人国ビザを取得して働くためには、大きく分けて5つの基準があります。
1.卒業した大学や専門学校で専攻した内容と日本で行う仕事との関連性
2.本人と会社の間の労働契約
3.日本人と同等以上の報酬を受け取ること
4.勤務先会社(招聘機関)の安定性・継続性があること
5.本人の素行に問題がないこと
以上を一言でまとめてしまうと申請人と勤務先の将来の見通しに問題がないこと、つまり、申請人の経歴に不安要素がなく、所属組織の経営が安定しており、両者の関係に矛盾がないことがポイントとなります。なお、これらについては、「技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための要件」というページで詳しく解説しています。
業種によって技人国ビザ取得のポイントは違う
技人国ビザの対象となる職種は広範囲に及びます。
そのため、技人国ビザの申請においては、同じ在留資格とはいえ、申請人(外国人)が就業予定の業種や職務内容ごとに審査される観点も多岐に渡り、それに伴い、申請書類も異なります。
採用担当者が申請人には職務適性があり、その仕事に向いていると考えて雇用理由書を作成しても、就労資格の許可は別の観点から評価されることが少なくありません。技人国ビザの申請にあたっては、このあたりをしっかりと理解しておく必要があります。
これらの点については、「【業種別】技人国ビザ取得のポイント」というページで別途解説していますので、ご参照ください。
技術・人文知識・国際業務ビザの業務内容は広範囲
冒頭でも確認したように、技人国ビザはもっとも多く取得されている就労資格です。その理由の一つは、技術・人文知識・国際業務という名前から想像できるように、適用される業種・職種の幅広さと関連しています。
その分、技人国ビザの申請にあたっては、ほかの在留資格と比較して考慮しなければならないポイントがあります。しかし、事前に業種や外国人従業員(申請人)との関係を十分に検討しておくことによって、申請から許可までを円滑に進めることも可能です。そのうちには、提出資料の準備から場合によっては申請する在留資格の変更まで含みます。
とはいえ、ビザの申請業務は個人の属性や出入国在留管理庁(旧・入国管理局)の動向に左右されることが少なくありません。もし手続きに不安がある場合や一度不許可が出てしまった場合など、在留資格の申請を専門とする行政書士に相談することをおすすめいたします。
カテゴリ:記事,外国人雇用・就労ビザ