技人国(技術・人文知識・国際業務)―もっとも取得者の多い就労ビザ―

「技術・人文・国際」―もっとも取得者の多い就労ビザ―

本ページで紹介する技術・人文知識・国際業務ビザ (技人国ビザ) は、様々な就労ビザの中でも取得者が大変多い、もっともポピュラーなビザです。

技人国ビザは、主に大学や専門学校などで学んだ専門知識を活かしたオフィスワークが該当します。

技人国ビザで従事できる仕事の例

以下は技人国ビザに当てはまる仕事の具体例ですが、理系・文系を問わず幅広い職種が技人国ビザに該当します。

 

・システムエンジニア, プログラマーなどIT関連の技術者
・機械工学などの技術者 ・機械,システムなどの設計者
・建築,土木などの設計者
・通訳,翻訳,語学指導(一般企業が営む英会話学校など)
・貿易業務,渉外業務
・営業 ・企画 ・商品開発
・マーケティング    ・コンサルティング
・広告,経理 ,人事,総務,法務,海外取引
・ファッションデザイナー
・建築家   ・室内装飾デザイナー  など

 

上記の例では、社内の事務方から企画・マーケティング、営業といった売り上げにかかわる職種、IT技術者や建築家、デザイナーといった専門職まで多様な業務が含まれています。

しかし、これらのような専門知識を活かしたオフィスワークであっても、別途対応する在留資格がある活動、「教授」、「芸術」、「報道」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」、「興行」に該当する活動は除かれます。

例えば、実際に授業を行う外国人の申請人(外国人) が、民間のスクールではなく公教育の現場で教える場合、該当する在留資格は「教育」となります。仮にまったく同じ内容を教えるとしても、国内の小中学校や高等学校、専門学校等で教師を務める場合は、より活動範囲が限定的な「教育」ビザが優先されるというわけです。

もう一つ別の観点から考えてみましょう。従業員のほとんどを外国籍の人が占める英会話スクールがあったとします。経営を行う外国人の方は「経営・管理」ビザとなり、スクール運営の実務を担う事務スタッフや実際に授業を行っているスタッフは「技術・人文知識・国際業務」ビザがそれぞれ該当する在留資格になります。

つまり、同一の職種でも属する組織によって、また、同一の職場でも職務内容や専門性によって、必要となる就労資格は異なってきます。

【図解:就労ビザ全体の中での技人国ビザの位置づけ】

技人国ビザの在留期間

各在留資格にはそれぞれ滞在できる期間が定められていますが、「技術・人文知識・国際業務」ビザ』の場合の在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかとなります。

これらの期間は、在留資格の申請書を提出する際に 「滞在予定期間」 (変更申請や更新申請では「希望する在留期間」)を記入することで希望を出せます。しかし許可される滞在期間は入国管理局の裁量による部分が大きいため、記入した滞在期間がそのまま許可されるとは限りません。

初回の申請で最長である5年間の在留可能期間が認められるケースは少なく、一般的には、初回申請では1年間の滞在期間が許可されることが多いです。ただ、上場して広く知られている企業や、大規模な組織が招聘機関である場合は、初回でも5年の許可が下りるケースがあります。

 

技術・人文知識・国際業務ビザを取得するには

外国籍の人が日本で技人国ビザを取得して働くためには、大きく分けて5つの基準があります。

1.卒業した大学や専門学校で専攻した内容と日本で行う仕事との関連性

2.本人と会社の間の労働契約

3.日本人と同等以上の報酬を受け取ること

4.勤務先会社(招聘機関)の安定性・継続性があること

5.本人の素行に問題がないこと

以上を一言でまとめてしまうと申請人と勤務先の将来の見通しに問題がないこと、つまり、申請人の経歴に不安要素がなく、所属組織の経営が安定しており、両者の関係に矛盾がないことがポイントとなります。なお、これらについては、「技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための要件」というページで詳しく解説しています。

業種によって技人国ビザ取得のポイントは違う

技人国ビザの対象となる職種は広範囲に及びます。
そのため、技人国ビザの申請においては、同じ在留資格とはいえ、申請人(外国人)が就業予定の業種や職務内容ごとに審査される観点も多岐に渡り、それに伴い、申請書類も異なります。
採用担当者が申請人には職務適性があり、その仕事に向いていると考えて雇用理由書を作成しても、就労資格の許可は別の観点から評価されることが少なくありません。技人国ビザの申請にあたっては、このあたりをしっかりと理解しておく必要があります。

これらの点については、「【業種別】技人国ビザ取得のポイント」というページで別途解説していますので、ご参照ください。

技術・人文知識・国際業務ビザの業務内容は広範囲

冒頭でも確認したように、技人国ビザはもっとも多く取得されている就労資格です。その理由の一つは、技術・人文知識・国際業務という名前から想像できるように、適用される業種・職種の幅広さと関連しています。

その分、技人国ビザの申請にあたっては、ほかの在留資格と比較して考慮しなければならないポイントがあります。しかし、事前に業種や外国人従業員(申請人)との関係を十分に検討しておくことによって、申請から許可までを円滑に進めることも可能です。そのうちには、提出資料の準備から場合によっては申請する在留資格の変更まで含みます。

とはいえ、ビザの申請業務は個人の属性や出入国在留管理庁(旧・入国管理局)の動向に左右されることが少なくありません。もし手続きに不安がある場合や一度不許可が出てしまった場合など、在留資格の申請を専門とする行政書士に相談することをおすすめいたします。

「企業内転勤」ビザとは――申請の要件や対象となる会社の種類は?

「企業内転勤」ビザどのような在留資格?

日本で経済活動をしようとする外国籍の人は、職務内容に対応した就労ビザを取得しなければなりません。

例えば、日本の大学で教鞭を取るために来日する外国籍の研究者は「教授」ビザを取得し、あるいは、プログラマーとして日本の企業に勤める外国籍の会社員は「技人国(技術・人文知識・国際業務)」ビザを取得するなど、数多くあるビザの中から該当するビザを一つ取得して日本に在留することとなります。

これからご紹介する企業内転勤ビザは、海外の系列会社から日本へ外国人社員を呼び寄せる場合など、「一定の関係を有する外国の企業等から日本国内の企業等に転勤」をする場合に使われます。例えば、東京に本店がある会社が、ニューヨーク支店から本店に人事異動を行いたい場合などが該当します。 

・企業内転勤ビザの対象となる会社とは

なお、この「一定の関係」の範囲については、審査要領で明確に範囲が定められています。
取引関係があるのみでは対象とならず、基本的には、同一会社内での異動(本店⇔支店)、及び、グループ会社内での異動が企業内転勤ビザ対象となります。

 

企業内転勤ビザの特徴

企業内転勤ビザには大きく2つの特徴があります。

①企業内転勤ビザにより行うことができる活動の範囲

技術・人文知識・国際業務ビザで許可されている活動内容と同一です。
それ以外の活動は認められていません。

 

②企業内転勤ビザで必要となる学歴や実務経験

申請人が転勤する直前に日本の本店,支店その他の事業所に1年以上継続して勤務していたことが要件です。そのため、大卒者でない方や実務経験が浅い方でも企業内転勤ビザの対象となります。

(注意事項
転勤前の一年間に従事していた仕事は「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当する業務であることが必要です。
そのため、外国の親会社に3年勤務しているものの、その間製造ラインでの現場作業に従事していた場合には、対象となりません。転勤後、日本で行う仕事は、技人国ビザの範囲であれば、業務内容はこれまでの業務と同一でなくても問題はありません。

 

企業内転勤ビザを利用するよくあるケース

企業内転勤ビザは、以下のような場合に利用されることが多いです。

    • ◇ 日本の企業と海外企業の間で新設会社を設立。海外企業の親会社から日本に社員を出向させたい場合
    • ◇ 世界各国に事業を持つ国際的企業において、即戦力として、海外から経験のある外国人社員を日本に転勤させる場合
    • ◇ 技術移転などのために、現地の外国人開発責任者を日本に転勤させる場合
    • ◇ 高いスキルを持つ人材であるが、高卒のため、技術・人文知識・国際業務ビザの許可基準である学歴の要件を満たしていない。しかしながら、海外子会社で既に1年以上継続勤務をしており、企業内転勤ビザで日本に転勤をさせたい場合

 

企業内転勤の対象となる会社の範囲

次に、企業内転勤の対象となる会社の範囲について図解でみてみましょう。

親会社と子会社

 

パターン①親会社⇔子会社 (青い線の関係)
パターン②子会社⇔子会社 (オレンジの線の関係)

企業内転勤ビザの対象となる会社の範囲(親会社と子会社) 

※曾孫会社と曾孫会社の間での異動(連結孫会社による子会社間の異動)は企業内転勤の対象となりません。しかしながら、曾孫会社が親会社の子会社とみなされる出資関係がある場合は企業内転勤の対象となります。

関連会社

 

パターン③親会社⇔親会社の関連会社(青い線の関係)
パターン④子会社⇔子会社の関連会社(オレンジの線の関係)


企業内転勤ビザの対象となる会社の範囲(関連会社)
※関連会社間の異動は企業内転勤の対象となりません。

企業内転勤ビザで働く社員の出向について

企業内転勤ビザで採用した社員を出向させる時は注意が必要です。

出向とは場面によって様々な意味で使われますが、ここでは「労働者が出向元と何らかの関係を保ちながら、出向先との間において新たな雇用契約関係に基づき一定期間継続的に勤務する形態」のことを指します。

日本の子会者間の出向は問題がありません。しかしながら、経営指導や技術指導などを目的として、出向元の企業に籍を残したまま、資本関係のない取引先や顧客先とも雇用契約を結んで働く、いわゆる在籍型出向は認められていません。

また、もともと勤めていた企業を退職して移籍する転籍出向は、実質的には出向先の企業へ転職と同じため、企業内転勤ビザから別のビザへの変更が必要となってきます。


企業内転勤ビザの対象となる会社の範囲(出向)

 

「企業内転勤」ビザに関してよくいただく質問

・企業内転勤ビザと、技術・人文・国際ビザとの違いが今一つ分かりません。日本で行うことのできる仕事の範囲は技術・人文・国際ビザと同じということですが、企業内の異動を行う際、技術・人文・国際ビザを使って呼び寄せてはいけないのですか?

⇒ 企業内転勤ビザでも技術・人文・国際ビザを使って呼び寄せても実務上、問題はありません。
どちらのビザを選択すると良いかについては、次のポイントを検討して判断することをお勧めします。

① 申請人の学歴
⇒申請人が高卒の場合、技人国ビザの要件を満たさないため、企業内転勤ビザを考えます

② 今後も継続的な招聘を考えているか否か
企業内転勤ビザは、技人国ビザに比べると、日本と海外の法人の関係性を証する資料を揃えるなど、申請に手間がかかる場合があります。しかし、継続した異動が予想される場合は、企業内転勤ビザの方が学歴等にとらわれないで広い範囲で人材の異動ができる可能性があります。

③ 日本での滞在予定期間
⇒ 企業内転勤ビザは、期間を定めた転勤という要件があります。日本での滞在期間がはっきりとしないが、長期滞在が予想されるのであれば、技術・人文知識・国際業務ビザを考えます。

・企業内転勤ビザで異動をさせた場合、給与の支払いは日本と海外、どちらの事業所から出さなければなりませんか
⇒日本の事業所からでも、海外の事業所からでも支払は可能です。ただし、いずれの場合においても、給与額は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」でなければなりません。

「技能ビザ」とは――申請ができる職種の種類や条件は?
在留資格「技能」

技能ビザとはどのような在留資格か

技能ビザは、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」をする外国籍の人に許可される在留資格です。

典型には、外国人の調理師やコックなど、外国料理を専門にした料理人が主な対象になります。外国の料理店で経験を積んだ料理人が日本の専門料理店で働くといったケースです。

また、その他にも、外国特有の建築土木の大工、貴金属・毛皮の技師、パイロットなども技能ビザに含まれます。スポーツの監督やコーチ、インストラクターもこのビザの対象です。

技能ビザの申請にあたっては、学歴などの要件は必要なく、一定の実務経験のあることが必要です。

 

「技能」ビザで調理師やコックとしての活動を行う場合

日本にはアジア料理をはじめ、世界の様々な料理店があります。

技能ビザはこのような外国料理のお店で調理等にあたる外国籍の方を対象としています。ただし、料理を行うのであれば何でもよいというわけではありません。

ここでの料理は、入管法(出入国管理及び難民認定法)にかかわる扱いで、「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で,次のいずれかに該当するもの 」(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号))と、外国において考案されたものであることが要件として定められています。

そのため、日本料理店や日本の居酒屋などでは取得ができず、また、調理の補助業務ではこのビザは取得ができません。

また、技能ビザはお店への勤務が前提となります。自身がお店のオーナーシェフなどになる場合は、技能ビザのまま調理に携わることはできず、[経営・管理]など異なったビザへの変更が必要です。

料理人が技能ビザを取得するための要件

◇専門料理店での実務経験が10年以上あること
(外国の教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間も含まれます)※ 実務経験のみで、学歴は要件にありません。専門の料理人としての経験が10年以上必要で、その立証がポイントとなります。※タイ料理人のみ5年以上の実務経験で取得できます

 

証明には、過去の勤務先から「在職証明書」を取得します。ケースによっては在職証明書を申請人の国で公正証書にした上で入国管理局に提出します。

10年以上の実務経験となると長いため、複数のお店で働いているケースも多くなります。記録をたどり、すべてのお店から証明書を取らなければなりません。

 

スポーツ指導者やパイロットなどその他の職種で「技能」ビザを取得する場合

料理人の他にも、省令で定められた、スポーツ指導者、パイロット、外国特有の製品製造者、ソムリエなども技能ビザの対象です。
細かく技能ビザの対象となる仕事と取得の条件をみてみましょう。

 

在留資格 「技能」調理師以外の活動

外国に特有の建築または土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指導監督を受けて従事する者の場合に あっては5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築または土木に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

外国に特有の製品の製造または修理に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造または修理に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

宝石、貴金属または毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

動物の調教にかかる技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

航空機の操縦に係る技能について1000時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法第2条第17項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの

スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間および報酬を受けて当該スポーツ に従事していた期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの、または、スポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の 国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの

ぶどう酒の品質の鑑定、評価および保持ならびにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という)に係る技能について5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
(1)ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という)において優秀な成績を収めたことがある者

(2)国際ソムリエコンクール(出場者が1国につき1名に制限されているもの に限る)に出場したことがある者
(3)ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む)もしくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む)またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者

上記どれか1つの要件を満たし、給料が『日本人と同等以上』であれば「技能ビザ」の要件を満たします。

色々な職業が並んでいますが、まずは一番上の「建築技術者」にご注目ください。

近年、建築現場などで働く外国人を目にすることは珍しいことではなくなりましたが、そうして働かれている方の多くは「技能」ビザではありません。

国土交通省が公開している『建設分野における外国人材の受け入れ』という資料では、建設業に従事する外国籍人材116,789人のうち、技能実習生が70,489人(約60.4%)ともっとも多く、特定技能で働かれる方12,776人(約11%)と合わせ、7割以上の方がこの2つの在留資格を持っているそうです(2022年)。

「技能」ビザがあるのになぜ?と思ってしまいがちですが、「技能」ビザの要件の部分をよくみると「外国に特有の建築又は土木にかかわる技能」とあります。

つまり、同じ建築物を建てる場合でも、それが外国風の建物で、建築する際に特別な技術が必要となるようであれば、「技能」ビザが必要になるということです。翻って言えば、国内の通常の建設作業に従事することができない、ということでもあります。

そのほかについても、「外国特有の製品の製造・修理」や「宝石・貴金属・毛皮加工」、「動物の調教師」、「ソムリエ」など、かなり専門的な知識あるいは経験が必要な職業が並んでいます。

「技能」ビザの申請にあたっては、これらの要件を満たすだけの知識の習得や実績が条件になります。

 

採用するお店側が注意すること

就労ビザの取得というと、どうしても申請者(外国籍従業員)の経歴に目が向きがちですが、料理店等、雇用者側が問題となる場合もあります。

例えば、外国料理店が新たに料理人を雇用するため、実務経験を十分に満たした外国人調理師の認定申請をしたが不許可になった例がそれです。

ここでの問題は、その店で以前に雇用をしていた外国人調理師の報酬に問題がありました。このケースでは過去の賃金台帳の提出が求められていましたが、外国人調理師の賃金が一律に低く抑えられており、その合理的な理由が説明できませんでした。

技能ビザにおいては、日本人と同等額以上の報酬を受けることの他、会社の経営の安定性・継続性も審査の対象となります。過去の外国人雇用に問題点があったため、新たな外国人雇用が難しくなってしまったケースは多々あります。社会保険への加入なども含め、労務環境の整備には十分な注意が必要です。

〈技能ビザの取得において、実務経験以外にチェックする項目〉

☑ 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
☑ 雇用契約、請負契約などを結んだ会社の経営の安定性・継続性
☑ 過去に在留状況の不良がないこと
新規従業員の技能ビザ申請にあたっては、申請者の提出書類だけではなく、申請者の労働環境や雇用者側の採用実績にも十分ご注意ください。 
 

技能ビザ申請に関してよくいただく質問

・技術・人文・国際ビザの在留資格の中には ”技術” がありますが、”技能” と何が違うのですか?
⇒ 技術・人文・国際の在留資格にある“技術”は「学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力」で「技能」の在留資格は「個人が自己の経験の集積によって有している能力」となります。
おおまかに表現すると、技術・人文・国際の在留資格にある“技術”は大学などで習得した知識を活用した仕事にあたり、「技能」の在留資格は現場の経験から高度に練成され、体得された技といえます。

 

・いくつもの店舗で料理の修行をしており、経験が10年を超えていることは間違いありません。
過去に努めたお店の中には、既に閉店してしまって連絡がとれない店もあります。どうすればよいでしょうか?
⇒技能ビザにおいて、実務経験期間の立証は特に重視されるポイントです。立証は申請人側がおこなうため、当時の会社から直接の在籍証明書がとれない場合は、その他の間接的な証拠となる資料を使い最大限の立証を試みますが、許可に至るのは大変難しくなります。

 

・外国の料理はどのくらいの種類をつくれることが必要ですか?
⇒フルコースの料理を作れる技能を持つことが望ましいです。
そこまでのバラエティがなくても、その国独自の調理方法で行う料理等、容易に真似のできない本場の外国料理を提供できる水準であれば技能ビザ取得の可能性はあります。

 

・海外から購入した大型機材のメンテナンスに専門的な技量が必要で、現地の外国人技師を招聘したいです。可能ですか?
⇒日本にはない製品の製造に係る独特の機材であれば「外国に特有の製品の製造または修理に係る技能」を有する者として技能ビザ取得の可能性はあります。対象となる大型機材の特性によりますが、メンテナンス業務の内容がエンジニアに近いケースでは、「技能ビザ」よりも、「技術・人文・国際ビザ」での招聘を検討することが必要となってきます。

 

技能ビザは、その上手な活用によって、海外の優秀な外国人を雇用でき、日本人のみでは発想のできなかった新たな料理の開発や、より創意に富んだサービスの提供が期待されます。「許可が取れるか不安」、「実務経験の証明が難しい」、「技能ビザに該当するか分からない」など、お悩みでしたら、ぜひ、ご相談下さい。
ポイント制を活用した新しい在留資格 ー高度専門職ビザー 

高度専門職ビザとは

高度専門職ビザは比較的新しい在留資格です。

日本国内の活性化に資することが期待される高い資質を持つ外国人(高度外国人材)の受入れを促進するために2015年に創設されました。

高度専門職ビザは他のビザとは異なり、ポイント制を活用する点が特徴です。
他の在留資格と比較して様々な優遇措置もあり積極的に活用をしたい在留資格のうちの1つです。

ポイントは研究の業績や学歴、職歴、年収などの項目ごとに点数が定められており、ポイント計算表で合計70ポイント以上になったときに取得することができます。

下の表は、2012年~2022年の高度専門職ビザで滞在する外国人の人数です。

年ごとに高度人材は増加しており、今後もますます増えてゆくことが予想されます。

出入国在留管理庁HP>高度外国人材の受入れ状況等について>高度人材ポイント制の認定件数の推移

高度専門職1号と2号の違い

高度専門職ビザは、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の2に分けられます。

そして、高度専門職1号は活動内容に応じて、さらに(イ),(ロ),(ハ)の3つに分類がされます。

高度専門職1号(イ),(ロ),(ハ)に該当する具体的な職種は以下のようになります。

 

高度専門職1号 (イ)

 

高度学術研究分野

日本の公的機関や民間企業等との契約に基づいて行う研究、研究指導、または、教育活動。

具体例:大学等での教育活動,民間企業での研究

※これらの活動と併せて、教育や研究の成果を活かして事業を立ち上げ自ら事業経営をすることも可能です。

 

高度専門職1号 (ロ)

 

高度専門・技術分野

日本の公的機関や民間企業等との契約に基づいて行う自然科学または人文科学の分野に属する知識、または、技術を要する業務に従事する活動。

具体例:所属する企業での技術者として製品開発業務。企画立案業務,ITエンジニアとしての活動などの専門的な職種がこれに当たります。

※これらの活動と併せて,関連する事業を立ち上げ自ら事業経営をすることも可能です。

 

高度専門職1号の(イ)と(ロ)は、技術・人文知識・国際業務ビザの活動内容と重なる部分が多いです。
ただし,技術・人文知識・国際業務ビザの中で、国際業務に該当する活動は高度専門職1号(ロ)には該当しません。

例:通翻訳業など

 

高度専門職1号 (ハ)

 

高度経営・管理分野

日本の公的機関や民間企業等において事業の経営を行いまたは管理に従事する活動が該当します。

具体例:会社の経営や、弁護士事務所・税理士事務所などの経営・管理をする活動

※これらの活動と併せて、活動内容と関連する会社や事業所を立ち上げ,自ら事業経営することも可能です。

高度専門職1号は他のビザとは異なり、活動内容が細かく限定されず、複合的な在留活動が許容されている点に特徴があるといえます。

 

 

高度専門職2号 

高度専門職2号は、高度専門職1号で3年以上活動を行っていた方が対象で、ポイントが80点以上の方が取得できます。

 

具体的には、高度専門職1号 (イ)・(ロ)・(ハ)のいずれか、または、これらの複数の活動と併せて下記の在留資格で認められる活動ができます。

※「教授」,「芸術」,「宗教」,「報道」,「法律・会計業務」,「医療」,「教育」,「技術・人文知識・国際業務」,「介護」,「興行」,「技能」,「特定技能2号」の在留資格に対応する活動

 

このように高度専門職2号を取得すると大変幅の広い就労活動が可能となります。

在留期間は1号が「5年」で、2号に該当すると在留期間は「無期限」となります。

これは安定的に高度外国人材を雇用する企業側にとってもメリットといえるでしょう。

 

図解:【高度専門職1号と2号】

 

ポイント制度とは

 

『高度専門職1号』(イ)、(ロ)、(ハ)は、ポイント制の評価項目から採点され70点以上と認められた場合に許可されます。

ポイント制は「学歴」「職歴」「年収」「年齢」と「ボーナス」部分から構成されています。「ボーナス」部分には「実績」「資格」「学歴」「政策」などの要素で構成されております。

ポイント計算表は、学歴,職歴,年収,年齢,研究実績,資格,特別加算の各項目からなり、それぞれにポイントが付されています。

実際にポイント計算表を使って計算してみましょう。

高度専門職ポイント計算表はこちら→

 

高度専門職ビザの7つの優遇措置について

高度専門職ビザの取得で新たに付与される優遇措置については以下のようなものがあります。

 

1.親の帯同

高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子を養育する場合には、高度外国人材またはその配偶者の親を日本に呼び寄せることができます。ただし、高度外国人材の世帯年収が800万円以上である場合に限られます。

 

2.家事使用人の帯同

高度外国人材の世帯年収が1000万円以上である場合、家事使用人を新たに雇用し、日本に帯同することができます。

 

3.在留期間「5年」の付与

高度専門職1号は、最長の在留期間である「5年」の在留期間が一律で与えられます。

 

4.配偶者の就労

高度専門職ビザで在留する方の配偶者は、時間制限なく就労することができます。

 

5.複合的な在留活動の許容

高度専門職ビザで在留する方は、主となる活動と併せて、これと関連する事業経営活動を自ら行うことが認められています。

 

6.入国・在留手続の優先処理

高度外国人材の入国・在留審査は、他のビザの外国人より優先的に処理が行われます。

 

7.永住許可要件の緩和

ポイント計算表で70点以上の高度外国人材は3年、80点以上の高度外国人材は1年の日本在留で永住許可が認められます

 

 

みなし高度人材⇒永住権の申請について

 

永住申請には、引き続き10年以上日本に住んでなければ永住申請できないという住居要件があります。

しかし、この要件に関して、高度人材の方は、以下のように要件が緩和されています。

 

[ポイントが70点以上の方は、住居要件は3年]

[ポイントが80年以上の方は、住居要件は1年]

 

この高度人材の優遇措置については、申請人が現時点では高度人材の在留資格を保持してなくても「みなし高度人材」の制度を使うことで優遇対象になるケースがあります。

 

例えば、今は技術・人文・国際業務の在留資格で活動をしているが、ポイントを計算してみると実際は70ポイント、あるいは80ポイントあったケースです。

このようなケースに該当する時は、3年以上前からポイントが70点以あったこと、あるいは、1年以上前から80点があったことの証明を永住申請の際に行い、かつ他の要件を満たしていれば、永住権の取得が可能になります。

注意点としては、永住の審査は半年ぐらいかかることが見込まれます。この半年の審査の間も、現在のポイント維持できることの証明が必要になります。そのため申請時には、現在勤務している企業から収入見込み証明書を取得して、年収を維持できること等を証明の上、申請手続きを行います。

 

本記事では、高度専門職ビザについてご紹介しました。
数多くある行政手続きの中でも、在留資格の申請は、個々の経歴や職歴などによって申請方法が異なり、許可を得るまでにはさまざまなハードルがあります。
在留資格の申請において、ご不明点やご不安なことがあれば、ぜひ一度お気軽に「無料相談」をご利用ください。

特別高度人材(J-Skip)とは

 特別高度人材(J-Skip)とは

 

特別高度人材(J-Skip)とは、2023年4月から導入された新しい制度です。

ざっくりとした説明ですが、特別高度人材は「高度専門職ビザ」がより発展したものと捉えると分かりやすいかもしれません。
「高度専門職ビザ」はポイント制を使い、ポイントが70点以上の場合に取得ができました。

特別高度人材はこのようなポイント制を使わず、学歴または職歴と、年収が一定以上であれば,「特別高度人材」として高度専門職ビザが取得できるように要件が広げられた制度です。

よく誤解をされる点ですが、「特別高度人材ビザ」といった種類のビザがあるわけではありません。
取得するビザは高度専門職ビザとなります。「特別高度人材」として認められると、「高度専門職」ビザの優遇措置がさらに拡充されます。

多くの優遇制度が設けられており、積極的に活用をしたい制度の一つです。

 

出入国在留管理庁HP>特別高度人材(J-Skip)>制度の概要

活動類型別:特別高度人材と認められる要件

 

「特別高度人材(J-Skip)」として認められるには、活動類型ごとに以下の要件が必要になります。

活動類型は以下の3つの類型があります。

(1)「高度学術研究活動」

日本の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動
(例 : 大学の教授や研究者等)

 

(2)「高度専門・技術活動」

日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
(例 : 企業で新製品の開発等を行う者、国際弁護士等)

 

(3)「高度経営・管理活動」

日本の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動
(例 : グローバルな事業展開を行う企業等の経営者等)

 

(1)・(2)の活動類型の方が特別高度人材と認められるための要件

・修士号以上取得かつ年収2,000万円以上・従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上

 

(3)の活動類型の方が特別高度人材と認められるための要件

・事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上

 

特別高度人材(J-Skip)の優遇措置

 

特別高度人材(J-Skip)として認められると、特別高度人材証明書が交付され、在留カード裏面欄外の余白に「特別高度人材」と記載されます。
そして、以下の①~⑧の、様々な拡充された優遇措置を受けることができます。

 

在留資格「高度専門職1号」での優遇措置

 

① 複合的な在留活動の許容

② 在留期間「5年」の付与

③ 在留歴に係る永住許可要件の緩和

④ 配偶者の就労

⑤ 一定の条件の下での親の帯同

⑥ 一定の条件の下での家事使用人の雇用

⑦ 大規模空港等に設置されているプライオリティレーンの使用

⑧ 入国・在留手続の優先処理

  

 

④の配偶者の就労について

 

日本人に滞在する外国人の配偶者は日本国内での就労が制限されています。

もし就労を希望する場合は、「資格外活動」の許可を得るか(週28時間までの制限あり)、あるいは、新たに別のビザを取得して就労する必要がありました。

 

特別高度人材制度では、このような制限がなくなり、特別高度人材の配偶者は、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「興行」、に該当する活動(従来の「高度専門職1号」の範囲)に加えて、さらに「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」、「技能」、に該当する活動についても、週28時間を超えて就労をすることが認められています。

 

また、これらのビザにそれぞれ設けられている経歴等の要件については、これを満たしていなくても就労ができます。幅の広い拡充がされており、「特別高度人材の配偶者」であれば、日本でほとんどの活動が制限なくできるといえるでしょう。

 

⑥の一定の条件の下での家事使用人の雇用について

 

従来の高度専門職ビザでも家事使用人の帯同をすることができましたが、「雇用主と共に出国する予定であること」や、「雇用主が13歳未満の子等を有していること」などのルールがありました。

特別高度人材と認められた場合は、こういったルールが緩和され、

 

・世帯年収が3,000万円以上の場合は、外国人の家事使用人を2人まで雇用可能

・13歳未満の子が居る等の家族要件は課されない

 

などと、要件が緩和されています。

 

 

在留資格「高度専門職2号」での優遇措置

 

※「高度専門職2号」には「高度専門職1号」(特別高度人材)で1年以上活動を行っていた方が移行でき、さらに拡充された下記の優遇措置を受けることができます。

 

◇ 高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる

◇ 在留期間が無期限となる

◇ 上記高度専門職1号の③から⑦までの優遇措置が受けられる

 

特別高度人材制度(J―Skip)のまとめ

 

特別高度人材として認められるには、学歴又は職歴と年収に高い水準が必要となります。

しかしながら、従来の高度専門職で必要であった複雑なポイント計算は必要なく、また、日本語能力は問われません。さらに事業の経営又は管理に係る場合は、学歴要件もありません。

特別高度人材制度は、高度な専門性を持つ外国人材にとって、日本への就労や永住を実現するための新たな選択肢となります。

また、企業の採用担当者にとっては、人材獲得の国際競争が増々激しくなるにあたり、優秀な外国人材の採用に向けて、特別高度人材制度に付与された様々な優遇措置は大きなアピール材料になると思われます。

 

当事務所は、特別高度人材制度をはじめとする、外国人材の就労・ビザ取得に関するサポートを専門としています。特別高度人材制度について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

特定活動46号(N1特定活動ビザ)ー現場労働が可能な新しい在留資格ー

本ページでは、2019年(令和元年)5月に新たに導入された特定活動46号について解説します。

幅広い業務に従事できる特定活動46号

「特定活動」とは、現在日本に設けられている就労ビザ(就労のできる在留資格)に該当しない活動を認める制度で、「法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格」のことです。

代表的な特定活動の例としては、「インターンシップ」(9号など)や「ワーキングホリデー」(5号)などがあります。
ほかにも、外交官等の個人的な家事使用人等(1号など)既存の在留資格に当てはまりにくいものもありますし、2021年に行われた東京オリンピックの関係者とその配偶者等(48・49号)国際的な規模の行事等で設けられるものもあります。

「特定活動46号」もそのひとつで、日本に留学する外国人が大学・大学院卒業後に、留学で得た高い日本語能力を活用することで、幅広い範囲をカバーする技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザの業務に加えて、サービス業務・製造業務への従事も可能とした在留資格です。

プログラム認定された専門学校の卒業生等も特定活動46号の対象に

特定活動46号は、日本語能力や学歴について高い基準が定められています。しかし、従来の技人国ビザでは認められていなかった現場での仕事にも従事することが可能となり、外国人が働く際の新たな選択肢として、存在が増しつつあります。

これまで、「特定活動46号」の対象となる方は、日本の4年制大学を卒業し又は日本の大学院の課程を修了して学位を授与され、日本語能力試験N1相当の日本語能力を持つ外国人に限られていました。
しかし、令和6年3月からは、認定を受けた日本の専門学校を卒業し、高度専門士の称号を取得した方も、特定活動告示46号の対象となることになりました。これにより、専門学校を卒業した外国人留学生のキャリア形成の可能性がさらに広がることが期待されます。

新たに特定活動46号の対象となる方の詳細や条件など

① 文部科学大臣から「外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定」を受けた専門学校を修了し、高度専門士の称号を受け、 日本語能力試験N1相当の日本語能力を持つ外国人

日本の短期大学又は高等専門学校を卒業した者で、大学における一定の単位の修得等を行い、 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の行う審査に合格し学士の学位を授与され、 日本語能力試験N1相当の日本語能力を持つ外国人

特定活動46号と技人国ビザや高度専門職、特定技能との違いは?

以上が「特定活動46号」の概要になりますが、これを他のビザと比較してみましょう。

以下は、業種や職種の点で特定活動46号と重なる部分のある就労ビザ「高度専門職」と「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」とを比較した表です。

図解:【 高度専門職 /技人国/ 特定活動46号/ 特定技能/ の取得要件一覧 】

まず注目していただきたいのは、「在留資格の特徴」です。

技人国ビザは「大学などで学んだ専門性を生かした仕事」、高度専門職は「より専門性の高い業務」とあり、いずれも専門性を要する業務が対象です。

他方、特定技能は「特に人手不足の著しい業種・業界」とありますが、もう少し細かく見ると農業や漁業などの第1次産業の一部、建設や造船、自動車整備等の第2次産業の一部、そして第3次産業のうち介護やビル清掃、外食、宿泊など、現場や施設内での作業を対象としています。

特定活動46号が位置づけられるのは、この両者の間です。
本邦の大学または大学院等の卒業を要件とし、専門性の高い業務を前提としつつも、現場や施設内での作業従事を認めています。

しかしながら、それは、単に専門的業務と現場作業の両方ができることを認めているということではありません。特定活動46号は、「学歴要件」で日本の大学等を卒業したことに加えて、日本語能力試験のN1あるいはビジネス日本語能力テスト480点以上等を要件としていますので、同僚と日本語を用いた高度なコミュニケーション能力の運用が前提とされている点が重要です。

特定活動46号で行える具体的な業務の例

次に、具体的な業務例をみてみましょう。

【特定活動46号で行える具体的な業務の例】

飲食店:
外国人客への通訳を兼ねた接客、店舗管理業務など
(※皿洗いや清掃のみへの従事は不可)   

小売店:
(スーパーマーケット・コンビニエンスストアなど)
通訳を兼ねた接客販売業務、仕入れ,商品企画など
(※商品の陳列や店舗の清掃のみへの従事は不可)

ホテルや旅館:
外国人客への通訳を兼ねた接客、外国語ホームページ作成、など(※客室清掃のみへの従事は不可)

タクシー会社:
観光客(集客)のための企画・立案、通訳を兼ねた観光タクシードライバー、通常のタクシードライバーとしての乗務も可(※車両整備、清掃のみへの従事は不可

介護施設:
外国人従業員・技能実習生への指導、介護業務
(※清掃・衣類の洗濯のみへの従事は不可)

食品製造会社:
他の従業員と日本語でのコミュニケーションを取りながら、商品企画・開発、製造ラインでの作業
(※指示されたライン作業のみへの従事は不可)

工場:
技能実習生や外国人従業員への外国語での指示伝達・指導、製造ライン作業など
(※ラインで指示された作業にのみ従事することは不可)
〈留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン 出入国在留管理庁 令和元年5月策定 令和2年2月改定より抜粋・要約〉

いずれも高い日本語能力を基礎にした業務や、また、外国人従業員や技能実習生が働く職場での指導やコミュニケーター的な業務が想定されています。また、単純作業のみを行うことを禁止している点も重要です。

いずれも高い日本語能力を基礎にした業務や、また、外国人従業員や技能実習生が働く職場での指導やコミュニケーター的な業務が想定されています。また、単純作業のみを行うことを禁止している点も重要です。

留学生にとっては日本語能力を生かした就職先の選択肢がより多様化したといえ、採用側企業にとっては外国人材の能力をより幅の広い現場で活かすことができる在留資格と考えられます。