【ケース別】永住ビザ取得の要件
永住申請には、原則として10年間日本に在留していることが必要です。
しかし、この在留期間については、特例によって下記のように10年間の日本在留がなくても永住権を申請できる場合があります。
永住申請で10年の在留が求められない主なケース
1.日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者
2.定住者(5年以上継続して日本に在留していることが必要)
3.高度専門職のポイント計算を行った場合に、3年前から70ポイント以上を有していた者
4.高度専門職のポイント計算を行った場合に、1年前から80ポイント以上を有していた者
5.『難民認定』を受けている方 (引き続き5年以上日本に在留していること)
6.日本への貢献があると認められた方 (引き続き5年以上日本に在留していること)
出典:法務省|永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)
以下ではパターン別に永住権取得に必要な要件について、解説を行います。
◇ 就労ビザから永住申請はこちら
◇ 日本人の配偶者等から永住申請はこちら
◇ 定住者から永住申請はこちら
◇ 経営管理から永住申請はこちら
◇ 高度専門職から永住申請はこちら
注意点
《永住者の在留資格にするデメリット》
高度専門職の在留資格から永住者に変更する場合は、1点注意が必要です。
高度専門職では、7歳未満の子どもの面倒を見てもらうための親の帯同ができましたが、永住権ではこの優遇措置がありません。高度専門職での在留資格から永住権への変更を検討する場合は、メリットデメリットを考慮して申請しましょう。
《永住者の在留資格を取った後も在留カードの更新は必要!》
永住権を取得するとビザの更新は必要なくなりますが、引き続き在留カードの更新は必要で、7年ごとにカードの更新をしなければなりません。更新を忘れると、最大で1年の懲役または20万円の罰金が科せられることがあるので注意しましょう。
就労ビザから永住
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就労ビザとは、正確に表現すると「就労の許可された在留資格」のことを意味し、最もポピュラーな就労ビザである、「技術・人文・国際」ビザの他に、「企業内転勤」、「技能」、「経営・管理」、「高度専門職」など、職種に応じて数多くの種類があります。
就労ビザを持つ方が永住権を取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
1. 居住要件:引き続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格を持って5年以上日本に在留していること
日本継続在留要件については、引き続き10年以上の日本滞在が必要な他に、直近の5年以上は就労系の在留資格であることが求められます。
直近の5年間で無職などの期間があるケースでは、日本継続在留要件を満たさない場合もあるため注意が必要です。
「引続き」とは
・在留資格が途切れることなく日本に継続して在留していることを意味しています。
・年間で通算して120日(4か月)以上の出国、または、3か月以上の継続した出国期間がある場合には、「引続き」と判断されず、日本での生活基盤がないとされる可能性が高くなります。
・なんらかの事情で上記に該当する出国期間がある場合には、出国の合理的な理由を審査官が納得できる形で説明することが必要です。そして、生活の拠点が日本にあり、今後も日本での生活が継続される見通しであることを証明を行います。
2.独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(独立生計要件)
独立生計要件とは
独立生計要件とは、「申請者が日本での生活において公共の支援を必要とせず、今後も安定した生活を維持できる能力を持っていること」を指します。
安定した生活の判断基準
「将来における安定した生活」が見込まれるかどうかの判断基準として、過去5年間の年収が300万円以上であることが一つの目安となります。この基準を満たしているかどうかが、申請者の生活の安定性を評価する重要な指標です。
ただし、直近5年間が年収300万円以下であったとしても、申請内容によっては許可となる場合もあるのであきらめないでください。
One Point advice
扶養人数について
扶養家族がいる場合、収入の基準が変わります。これは、扶養人数が多いほど生活にかかる費用が増えるためです。仮に扶養家族が1人増えると、年収に70万円前後をプラスした額が目安となります。例えば、独身であれば年収300万円が目安ですが、妻を扶養している場合は370万円程度、さらに子供1人を扶養している場合は、妻と子供を合わせて最低でも440万円程度の年収が望ましいとされています。
One Point advice
例外:難民認定を受けた場合
難民認定を受け、「定住者」の在留資格を得た場合は、独立生計要件を満たしていなくても永住権の申請が可能となります。このため、難民として認定された人々は、一般的な永住申請者と異なり、この要件をクリアする必要はありません。
3.税金や社会保険の納付に問題がないこと
永住権の申請には、税金、健康保険、年金の三つの支払いが適切に履行されていることが必要です。
永住権を申請する際は、下記の期間について、これら3点の支払い状況を証明する書類提出します。
(住民税 / 源泉所得税及び復興特別所得税 / 申告所得税及び復興特別所得税 / 消費税及び地方消費税 / 相続税 / 贈与税)
⇒ 過去5年間(日本人配偶者等の場合は3年間)
<健康保険料>
⇒ 過去2年間
<年金>
⇒ 過去2年間
支払いについては未納がないだけでなく、支払い期限内に収めていることが必要です。
一度でも支払いが遅れた場合、永住申請が不許可となる可能性があります。
会社員であった方は住民税、健康保険、年金の三つは給与から天引きされているため、通常は問題ありません。しかし、個人事業主であった期間があったり、転職歴があり、その転職活動の間はご自身で納めていた場合は注意が必要です。
永住申請での住民税の納付に関する書類
(1)直近5年間の住民税を全て「特別徴収」 (給与から住民税が天引きされている)で納付している場合
⇒ 納税証明書(個人住民税)を提出します。
※対象年度の1月1日に住民票を置いていた市区町村役場で取得ができます。
市区町村を越えて転居されている場合は、複数の市区町村役場から書類を取得する必要があります。
(2) 直近5年間のうち、ご自身で納めていた期間がある場合(転職歴があり、自分で納めていた期間があるケース)
⇒ 「領収証書のコピー」、「預金通帳のコピー」を提出します。
※ 納付期限を過ぎて納付が行われていた場合、永住申請時に「納付期限内に納付できなかった理由」を説明する書類を追加で準備することを推奨します。
住民税以外の税金納付に関する書類
住民税以外の税金については、お住まいの地域を管轄する「税務署」で「納税証明書(その3)」という書類を取得します。この書類によって、未納の税額がないことの証明ができます。
取得の際、次の5つの項目が記載されていることを確認します。
源泉所得税及び復興特別所得税/申告所得税及び復興特別所得税/消費税及び地方消費税/相続税/贈与税
※納税証明書(その3)には(その3の2)、(その3の3)という税目を指定した納税証明書もあります。永住申請に必要なのは「納税証明書(その3)」のみとなります。
永住申請での年金に関する書類
申請人及び申請人を扶養する方の公的年金の納付状況を証明する資料の提出が必要です。
(1) 直近2年間に国民年金に加入していた期間がない場合
⇒ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
※日本年金機構のホームページから、ねんきんネットへの登録が必要です。
(2) 直近2年以内に国民年金に加入していた期間がある場合
⇒国民年金保険料領収証書(コピー)、または、国民年金保険料納付の預金通帳(コピー)
※領収証書が紛失などにより提出できない場合は、その事情を説明した補足説明書を提出します。
過去の支払いで万が一遅れが出てしまっていた場合は、遅れがなく年金の支払いを2年間継続して要件を満たしてから申請することを推奨します。
※学生時代の年金に未納があった場合
永住申請で年金に関しては、直近2年分が審査されます。そのため、通常、学生時代の年金は審査の対象期間に入りません。したがって、学生時代の年金が未納であることを理由として、永住申請が不許可になることはありません。
永住申請での健康保険料に関する書類
◇ 健康保険の加入状況が分かる資料
現在持っている健康保険証のコピー
※ 表面と裏面の両方が必要です
◇ 健康保険料の納付が分かる書類
(1) 直近の2年間に国民健康保険に加入していた時期がない場合
(直近の2年間は健康保険料が特別徴収(給与から天引き)されていた)
⇒ 現在持っている健康保険被保険者証(コピー)を提出します。
(2) 直近の2年間に国民健康保険に加入していた時期がある場合
(例:自営業やフリーランスの方。転職歴があり、その期間は健康保険料が給与から天引きされないため、自身で納めていた方)
⇒ a:国民健康保険料納付証明書 (現在住んでいる地域を管轄する 市区町村役場で取得)
b:健康保険料の領収証書のコピー、または、健康保険料納付の預金通帳のコピー
※aとbの両方を提出します。
過去の支払いで万が一遅れが出てしまっていた場合は、遅れがなく年金の支払いを2年間継続して要件を満たしてから申請することを推奨します。
4.素行が善良であること
法務省入国管理局「入国・在留審査要領」(内部規定)では、素行が善良であるとはいえない者として、以下を掲げています。
(1)日本国の法令に違反して、懲役、禁固又は罰金に処せられたことがある者
(2)少年法による保護処分(少年法24条の保護処分)が継続中の者
(3)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者
(1)は、いわゆる“前科”に関連するもので、素行不良の最たるものと言えるでしょう。しかし、前科があったとしても、それが理由で永住申請が永久に許可されないわけではありません。懲役又は禁錮については、その執行を終わり、もしくは免除を得た日から10年(罰金については5年)を経過した場合等は、上記から除かれます。そのため、その後の生活態度等によっては、永住が許可される可能性も十分にあります。
「素行善良要件」に関するよくある質問の一つに、交通違反の履歴がどのように影響するかという点があります。
交通違反の場合でも、上記のように罰金以上の刑罰に処せられた場合は、素行の善良性が否定されることになります。
また、懲役・禁固・罰金・拘留・科料に該当しないような軽微な違反でも、繰返し行っている場合は、素行の善良性が否定されることになります。
例えば、駐車禁止違反や一時停止違反、携帯電話使用違反、また、最近では自転車による違反行為などを5回以上行っている場合が該当します。
飲酒運転や無免許運転などは明らかな故意であり、軽微な違反ではありませんので、5回などではなく、1回でも違法行為または風紀を乱す行為を繰返し行っている者として、素行の善良性が否定されると考えられます。
自身の交通違反の履歴を確認したい場合は、「自動車安全運転センター」に申し込みをして「運転記録証明書」という書類を発行してもらうと調べることができます。
その他の要件
◇現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
現在もっている在留資格が最長「5年」の在留期間で許可されている必要があります。
※現時点(2024年3月)では「3年」の在留期間が許可されている場合でも、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱われます。
◇身元保証人がいること
<身元保証人の条件>
・日本人、または「永住者」で安定した収入と納税状況に問題がない方。
<身元保証人の責任>
・滞在費、帰国費用、法令遵守の確認が主な責任。
・経済的な賠償責任はなし。
<法的責任の不在>
・身元保証人は法的責任を負わず、問題があっても罰則は受けない。
入管法における身元保証人の責任範囲
身元保証人は、外国人が日本の法令を守り、公的義務を果たすよう指導し、入管の指示に従うように促すことが求められます。しかし、外国人が問題や犯罪を起こした場合でも、身元保証人が法的に罰せられたり、損害賠償責任を負うことはありません。
つまり、身元保証人は法的義務を負うわけではなく、道義的責任を担うことになります。これは、連帯保証人のように賠償責任を負うものではないことを意味します。
ただし、万が一外国人本人に問題が起こった時、身元保証人として道義的責任が果たせない場合はそれ以降、身元保証人としての適性を欠くと判断されることがあり、今後の入国・在留申請において身元保証人として不適格と見なされる可能性があります(他の外国人の身元保証人になれなくなる)。
身元保証人をお願いする際には、法的強制力がなく、あくまで道義的責任であることをしっかり説明することが重要です。そうすることで、その責任が過度に重いものでないことが理解され、保証人を引き受けやすくなります。
◇公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
特定の感染症疾患者や慢性中毒者などが公衆衛生上有害となるおそれがあるとして取り扱われます。
永住権を取得することには多くのメリットがありますが、そのためには様々な要件をクリアした上での申請が必要です。自分が永住権の要件を満たしているか不安だったり、必要な書類が多くてどこから手を付ければよいかわからない場合などは、どうぞお気軽にご相談ください。