スポーツ選手のビザ ーー日本で行う活動の実態が審査の対象

スポーツ選手のビザを考える

現在、日本には29種類と多くの種類のビザ(在留資格)が設けられています。
では、スポーツ選手はどのような種類のビザで来日するのでしょうか。

スポーツ選手のビザについて考えてみることは、ビザの理解に大きく役立つため解説をしてみます!
スポーツ選手のビザと聞くと、29種類の中からどれか一つを選択して、ビザを取得することができるような気がしてしまうかもしれません。しかし実際には同じスポーツ選手という枠組みの中でも、その人1人1人の立場や報酬のあり方によって取得することができるビザは異なります。

スポーツ選手という名称でビザが決定するのではなく、あくまで1人1人の具体的な活動の実態に合わせてビザが発行されるという仕組みになっています。
以下で具体的に見てゆきましょう。

▶ プロスポーツ選手の場合のビザ

スポーツ選手が長期にわたりプロとして活動し、収入を得る場合のビザは、就労ビザの一種である「興行ビザ」を取得します。

興行ビザとは、演劇やダンス、歌手、モデル、俳優、音楽家、格闘家、タレント、プロスポーツ選手など、さまざまな「興行活動」を行う際に必要なビザです。

興行ビザは、活動形態によって以下のように4つに分類がされており、スポーツ選手の場合には「基準3号」が該当します。

 

・基準1号:レストランやクラブなどにおける演芸、歌謡、舞踊活動を行う場合

・基準2号:学校や劇場、その他地方公共施設においてコンサートなどの興行活動を行う場合

・基準3号:野球、サッカー、格闘技などスポーツ活動に従事する場合

・基準4号:映画制作、テレビ番組への出演、CM撮影など芸能活動を行う場合

 

日本のプロ野球選手、外国人力士、Jリーグ所属のプロサッカー選手、Bリーグのプロバスケットボール選手、ゴルフトーナメントに出場するプロゴルファーなどは基準3号の代表的な例となります。

 

企業などの実業団に所属するアマチュアの選手

 同じようにスポーツ活動によって報酬を得る場合でも、企業が運営する実業団チームで活動する選手は、「興行」ビザではなく、「特定活動ビザ(告示6号)」になります。

 

【特定活動(告示6号)ビザの取得要件】

・本邦の公私の機関内のクラブチームが,興行を事業の目的とせず,自社の宣伝や技術を競う目的で行うスポーツの試合に参加させるために契約(雇用)したものであること。

・クラブチームの所属機関が,スポーツの試合を事業として行っていないこと。

・オリンピックや世界選手権など国際的な大会に出場経験があること。

・日本の公私の機関に雇用され,月額25万円以上の報酬を受けること。

 

特定活動とは?

「特定活動」とは、簡潔に表現すると、現在日本に設けられている就労ビザ(就労のできる在留資格)に該当しない活動を認める制度で、「法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格」のことです。

代表的な特定活動の例としては、「インターンシップ」(9号など)や「ワーキングホリデー」(5号)などがあります。
ほかにも、外交官等の個人的な家事使用人等(1号など)既存の在留資格に当てはまりにくいものもありますし、2021年に行われた東京オリンピックの関係者とその配偶者等(48・49号)国際的な規模の行事等で設けられるものもあります。

▶ 大会への出場目的で来日する場合のビザ

大会とはオリンピック、国際大会、親善試合等、日本で開催される大会のことを指します。
大会期間中のみの滞在が予定され、報酬を目的とせず、3カ月以内に帰国する場合は、「短期滞在」ビザが該当します。しかし大会ごとに目的は異なりますので、興行目的の大会や、賞金・報酬がある場合には興行ビザが該当します。
※国際大会に参加するアマチュアスポーツ選手は、賞金・報酬の有無に関係なく一律に「短期滞在」に該当します。

 

▶ スポーツ指導者のビザ

スポーツ選手とは異なり、スポーツ指導者は「技能」ビザの取得が必要です。
技能ビザとは、特殊な分野において熟練の技能を持つ外国人が日本で就労する場合に必要となるビザです。
熟達した調理師が主な対象ですが、その他に外国特有の建築土木の大工、貴金属・毛皮の技師、パイロットも技能ビザに含まれ、スポーツ指導者もこのビザの対象となります。

 

スポーツ指導者の「技能」ビザ取得要件

 スポーツ指導者が技能ビザを取得するには,大きく2つの要件があります。

①スポーツ指導の実務経験が3年以上、または、オリンピックや世界大会などの出場経験があること
②そのスポーツ指導に係る技能を要する業務に従事すること。

スポーツ指導の実務経験とは、企業や団体に所属して,報酬を得てスポーツの指導をしていた経験となります。また、実務経験には、外国の教育機関で当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間も含まれます。
②については、日本の企業や団体との契約が必要です。海外企業に雇われたままスポーツ指導に携わる場合はこの要件を満たしません。

技能ビザの詳細についてはこちら
「技能ビザ」とは――申請ができる職種の種類や条件は?

 

「興行」になるケースもある

スポーツ指導者が、スポーツの指導以外に、選手の試合などの興行活動に参加・出場するようなケースでは、「技能」ビザではなく、「興行」ビザの取得が必要になる場合もあります。これは、そのスポーツイベントがどの程度興行的要素を含んでいるかを、複数の観点から検討し、個別に判断されることになります。

このように同じスポーツ選手でもその活動内容や雇用の形態により、取得するビザは「興行」、「特定活動」、「短期滞在」など様々なパターンが考えられます。
在留資格の認定においては職業の外形的な名称ではなく、日本で行う活動の実態が審査の対象となることを理解しておきましょう。

無料相談

ビザの申請に不安がある場合は、まずは在留資格に詳しい行政書士に相談してみることをおすすめします。
早期に相談することで、問題点を把握し、ビザ取得の可能性を高めることができます。
当事務所は、神奈川県の東部を拠点にビザ申請の業務を承っております。
数多くある行政手続きの中でも、在留資格の申請は、お一人お一人の経歴や職歴等によって申請方法も異なり、許可に至るまでには様々なハードルがあります。
当事務所では、お客様のご状況を丁寧にヒアリングし、問題点を洗い出し、最適な申請プランをご提案いたします。
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