経営管理から永住
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経営管理ビザから永住への変更は、技術・人文・国際などの就労ビザからの永住に変更する場合と多くの点で要件は重なります。
しかし、会社員とは異なり、法人税や事業税など会社経営に伴う税の納付や、社員の社会保険の加入状況など、新たに確認が必要な点も多くあります。
1. 居住要件:引き続き10年以上日本に在留し、このうち就労資格を持って5年以上日本に在留していること
日本継続在留要件については、引き続き10年以上の日本滞在が必要な他に、直近の5年以上は就労系の在留資格であることが求められます。
直近の5年間で会社を休眠していた時期があるケースでは、日本継続在留要件を満たさない場合もあるため注意が必要です。
「引続き」とは
・在留資格が途切れることなく日本に継続して在留していることを意味しています。
・年間で通算して120日(4か月)以上の出国、または、3か月以上の継続した出国期間がある場合には、「引続き」と判断されず、日本での生活基盤がないとされる可能性が高くなります。
・なんらかの事情で上記に該当する出国期間がある場合には、出国の合理的な理由を審査官が納得できる形で説明することが必要です。そして、生活の拠点が日本にあり、今後も日本での生活が継続される見通しであることの具体的な証明を行います。(日本での不動産の有無や、子どもが日本の学校に通っている等を説明するなど。)
2.独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること(独立生計要件)
「独立生計要件」は、経営者の場合、特別に考慮が必要な点があります。主に、この要件は「生活が安定していること」を重視しています。つまり、自分の資産や能力によって将来的に安定した生活を送れているかどうかが大切です。
したがって注意が必要なのは、自身の会社の経営状態です。例えば、会社が赤字を続けている、あるいは借入金が膨らんで債務超過になっているような状況では、この要件を満たすことが難しくなります。
また、会社を設立してからおおよそ1年ほどでは、経営の安定性が十分ではないと判断されがちで、許可を得られる可能性が低くなります。そのため、「経営・管理」の在留資格を取得してから事業を開始し、黒字経営が2年以上続いた後に永住申請を行うのが理想的です。
役員報酬の金額については、最低でも年間300万円以上に設定しておくことが推奨されます。また、過去5年間にわたって300万円以上の報酬が継続していることも重要です。
One point advice
扶養人数を考慮した役員報酬が必要
給料(役員報酬)は扶養人数が1人増えるごとに年収は、70~100万円をプラスして考えます。例えば、妻と子どもが扶養に入っている場合は、最低でも140万円を加算した440~500万円の給料(役員報酬)が求められます。
One point advice
永住権を申請する本人が専業主婦(主夫)などで収入がなく、独立生計要件を満たしていなくても、その配偶者が要件を満たしていることが確認できれば、申請が可能となる場合があります。これは、独立生計要件が必ずしも申請者自身に求められているわけではないためです。
3.税金や社会保険の納付に問題がないこと
納税などについても、経営者の場合、特別に考慮が必要な点があります。
技人国ビザなどで働く会社員が永住申請をする際に確認が必要な税金・社会保険は、所得税や住民税、健康保険、国民年金となります。
しかし、経営者の場合、これらの個人としての税金や社会保険料の他、会社としての税金 (法人税や事業税・消費税法・都道府県・市区町村民税等)と、 住民税や所得税等の両方について納付の確認が必要です。
また、それぞれについて納期限を守って支払いをしているかどうかも重要です。もしも納期限を守って支払いをしていない場合は、永住申請をする直近の2年間、納期限を守って支払っている実績をつくってから申請することが必要です。
永住申請での住民税の納付に関する書類
(1)直近5年間の住民税を全て「特別徴収」 (給与から住民税が天引きされている)で納付している場合
⇒ 納税証明書(個人住民税)を提出します。
※対象年度の1月1日に住民票を置いていた市区町村役場で取得ができます。
市区町村を越えて転居されている場合は、複数の市区町村役場から書類を取得する必要があります。
(2) 直近5年間のうち、ご自身で納めていた期間がある場合(転職歴があり、自分で納めていた期間があるケース)
⇒ 「領収証書のコピー」、「預金通帳のコピー」を提出します。
※ 納付期限を過ぎて納付が行われていた場合、永住申請時に「納付期限内に納付できなかった理由」を説明する書類を追加で準備することを推奨します。
住民税以外の税金納付に関する書類
住民税以外の税金については、お住まいの地域を管轄する「税務署」で「納税証明書(その3)」という書類を取得します。この書類によって、未納の税額がないことの証明ができます。
取得の際、次の5つの項目が記載されていることを確認します。
源泉所得税及び復興特別所得税/申告所得税及び復興特別所得税/消費税及び地方消費税/相続税/贈与税
※納税証明書(その3)には(その3の2)、(その3の3)という税目を指定した納税証明書もあります。永住申請に必要なのは「納税証明書(その3)」のみとなります。
永住申請での年金に関する書類
申請人及び申請人を扶養する方の公的年金の納付状況を証明する資料の提出が必要です。
(1) 直近2年間に国民年金に加入していた期間がない場合
⇒ねんきんネットの「各月の年金記録」の印刷画面
※日本年金機構のホームページから、ねんきんネットへの登録が必要です。
(2) 直近2年以内に国民年金に加入していた期間がある場合
⇒国民年金保険料領収証書(コピー)、または、国民年金保険料納付の預金通帳(コピー)
※領収証書が紛失などにより提出できない場合は、その事情を説明した補足説明書を提出します。
過去の支払いで万が一遅れが出てしまっていた場合は、遅れがなく年金の支払いを2年間継続して要件を満たしてから申請することを推奨します。
※学生時代の年金に未納があった場合
永住申請で年金に関しては、直近2年分が審査されます。そのため、通常、学生時代の年金は審査の対象期間に入りません。したがって、学生時代の年金が未納であることを理由として、永住申請が不許可になることはありません。
永住申請での健康保険料に関する書類
◇ 健康保険の加入状況が分かる資料
現在持っている健康保険証のコピー
※ 表面と裏面の両方が必要です
◇ 健康保険料の納付が分かる書類
(1) 直近の2年間に国民健康保険に加入していた時期がない場合
(直近の2年間は健康保険料が特別徴収(給与から天引き)されていた)
⇒ 現在持っている健康保険被保険者証(コピー)を提出します。
(2) 直近の2年間に国民健康保険に加入していた時期がある場合
(例:自営業やフリーランスの方。転職歴があり、その期間は健康保険料が給与から天引きされないため、自身で納めていた方)
⇒ a:国民健康保険料納付証明書 (現在住んでいる地域を管轄する 市区町村役場で取得)
b:健康保険料の領収証書のコピー、または、健康保険料納付の預金通帳のコピー
※aとbの両方を提出します。
過去の支払いで万が一遅れが出てしまっていた場合は、遅れがなく年金の支払いを2年間継続して要件を満たしてから申請することを推奨します。
4.素行が善良であること
法務省入国管理局「入国・在留審査要領」(内部規定)では、素行が善良であるとはいえない者として、以下を掲げています。
(1)日本国の法令に違反して、懲役、禁固又は罰金に処せられたことがある者
(2)少年法による保護処分(少年法24条の保護処分)が継続中の者
(3)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者
(1) は、いわゆる“前科”に関連するもので、素行不良の最たるものと言えるでしょう。しかし、前科があったとしても、それが理由で永住申請が永久に許可されないわけではありません。懲役又は禁錮については、その執行を終わり、もしくは免除を得た日から10年(罰金については5年)を経過した場合等は、上記から除かれます。そのため、その後の生活態度等によっては、永住が許可される可能性も十分にあります。
「素行善良要件」に関するよくある質問の一つに、交通違反の履歴がどのように影響するかという点があります。
交通違反の場合でも、上記のように罰金以上の刑罰に処せられた場合は、素行の善良性が否定されることになります。
また、懲役・禁固・罰金・拘留・科料に該当しないような軽微な違反でも、繰返し行っている場合は、素行の善良性が否定されることになります。
例えば、駐車禁止違反や一時停止違反、携帯電話使用違反、また、最近では自転車による違反行為などを5回以上行っている場合が該当します。飲酒運転や無免許運転などは明らかな故意であり、軽微な違反ではありませんので、5回などではなく、1回でも違法行為または風紀を乱す行為を繰返し行っている者として、素行の善良性が否定されると考えられます。
自分の交通違反の履歴を確認したい場合は、「自動車安全運転センター」に申し込みをして「運転記録証明書」という書類を発行してもらうと調べることができます。
その他の要件
◇現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること
現在もっている「経営・管理」の在留資格が最長(5年)の在留期間で許可されている必要があります。
ただし、現時点(2024年3月)では「3年」の在留期間が許可されている場合でも、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱われます。
◇身元保証人がいること
入管法における身元保証人は、法的責任を負うものではなく、道義的な責任にとどまります。
問題が発生した場合、入管から滞在費や帰国費用の支払いを求められることはありません。また、申請者が法を犯した場合でも、「なぜ法を守らせなかったのか」と責任を問われることはありません。
つまり、仮に永住申請者が法律違反を犯しても、身元保証人は罰則を受けることはないということです。
<身元保証人の条件>
・日本人、または「永住者」で安定した収入と納税状況に問題がない方。
<身元保証人の責任>
・滞在費、帰国費用、法令遵守の確認が主な責任。
・経済的な賠償責任はなし。
<法的責任の不在>
・身元保証人は法的責任を負わず、問題があっても罰則は受けない。
入管法における身元保証人の責任範囲
身元保証人は、外国人が日本の法令を守り、公的義務を果たすよう指導し、入管の指示に従うように促すことが求められます。しかし、外国人が問題や犯罪を起こした場合でも、身元保証人が法的に罰せられたり、損害賠償責任を負うことはありません。
つまり、身元保証人は法的義務を負うわけではなく、道義的責任を担うことになります。これは、連帯保証人のように賠償責任を負うものではないことを意味します。
ただし、万が一外国人本人に問題が起こった時、身元保証人として道義的責任が果たせない場合はそれ以降、身元保証人としての適性を欠くと判断されることがあり、今後の入国・在留申請において身元保証人として不適格と見なされる可能性があります(他の外国人の身元保証人になれなくなる)。
身元保証人をお願いする際には、法的強制力がなく、あくまで道義的責任であることをしっかり説明することが重要です。そうすることで、その責任が過度に重いものでないことが理解され、保証人を引き受けやすくなります。
◇公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
指定感染症や新感染症なども公衆衛生上の観点から有害となる恐れになるものとされています。
永住権を取得することには多くのメリットがありますが、そのためには様々な要件をクリアした上での申請が必要です。自分が永住権の要件を満たしているか不安だったり、必要な書類が多くてどこから手を付ければよいかわからない場合などは、どうぞお気軽にご相談ください。