「企業内転勤」ビザどのような在留資格?
日本で経済活動をしようとする外国籍の人は、職務内容に対応した就労ビザを取得しなければなりません。
これからご紹介する企業内転勤ビザは、海外の系列会社から日本へ外国人社員を呼び寄せる場合など、「一定の関係を有する外国の企業等から日本国内の企業等に転勤」をする場合に使われます。例えば、東京に本店がある会社が、ニューヨーク支店から本店に人事異動を行いたい場合などが該当します。
・企業内転勤ビザの対象となる会社とは
なお、この「一定の関係」の範囲については、審査要領で明確に範囲が定められています。
取引関係があるのみでは対象とならず、基本的には、同一会社内での異動(本店⇔支店)、及び、グループ会社内での異動が企業内転勤ビザ対象となります。
企業内転勤ビザの特徴
企業内転勤ビザには大きく2つの特徴があります。
①企業内転勤ビザにより行うことができる活動の範囲
技術・人文知識・国際業務ビザで許可されている活動内容と同一です。
それ以外の活動は認められていません。
②企業内転勤ビザで必要となる学歴や実務経験
申請人が転勤する直前に日本の本店,支店その他の事業所に1年以上継続して勤務していたことが要件です。そのため、大卒者でない方や実務経験が浅い方でも企業内転勤ビザの対象となります。
(注意事項)
転勤前の一年間に従事していた仕事は「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当する業務であることが必要です。
そのため、外国の親会社に3年勤務しているものの、その間製造ラインでの現場作業に従事していた場合には、対象となりません。転勤後、日本で行う仕事は、技人国ビザの範囲であれば、業務内容はこれまでの業務と同一でなくても問題はありません。
企業内転勤ビザを利用するよくあるケース
企業内転勤ビザは、以下のような場合に利用されることが多いです。
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- ◇ 日本の企業と海外企業の間で新設会社を設立。海外企業の親会社から日本に社員を出向させたい場合
- ◇ 世界各国に事業を持つ国際的企業において、即戦力として、海外から経験のある外国人社員を日本に転勤させる場合
- ◇ 技術移転などのために、現地の外国人開発責任者を日本に転勤させる場合
- ◇ 高いスキルを持つ人材であるが、高卒のため、技術・人文知識・国際業務ビザの許可基準である学歴の要件を満たしていない。しかしながら、海外子会社で既に1年以上継続勤務をしており、企業内転勤ビザで日本に転勤をさせたい場合
企業内転勤の対象となる会社の範囲
次に、企業内転勤の対象となる会社の範囲について図解でみてみましょう。
親会社と子会社
パターン①親会社⇔子会社 (青い線の関係)
パターン②子会社⇔子会社 (オレンジの線の関係)

※曾孫会社と曾孫会社の間での異動(連結孫会社による子会社間の異動)は企業内転勤の対象となりません。しかしながら、曾孫会社が親会社の子会社とみなされる出資関係がある場合は企業内転勤の対象となります。
関連会社
パターン③親会社⇔親会社の関連会社(青い線の関係)
パターン④子会社⇔子会社の関連会社(オレンジの線の関係)

企業内転勤ビザの対象となる会社の範囲(関連会社)
企業内転勤ビザで働く社員の出向について
企業内転勤ビザで採用した社員を出向させる時は注意が必要です。
出向とは場面によって様々な意味で使われますが、ここでは「労働者が出向元と何らかの関係を保ちながら、出向先との間において新たな雇用契約関係に基づき一定期間継続的に勤務する形態」のことを指します。
日本の子会者間の出向は問題がありません。しかしながら、経営指導や技術指導などを目的として、出向元の企業に籍を残したまま、資本関係のない取引先や顧客先とも雇用契約を結んで働く、いわゆる在籍型出向は認められていません。
また、もともと勤めていた企業を退職して移籍する転籍出向は、実質的には出向先の企業へ転職と同じため、企業内転勤ビザから別のビザへの変更が必要となってきます。

「企業内転勤」ビザに関してよくいただく質問
・企業内転勤ビザと、技術・人文・国際ビザとの違いが今一つ分かりません。日本で行うことのできる仕事の範囲は技術・人文・国際ビザと同じということですが、企業内の異動を行う際、技術・人文・国際ビザを使って呼び寄せてはいけないのですか?
⇒ 企業内転勤ビザでも技術・人文・国際ビザを使って呼び寄せても実務上、問題はありません。
どちらのビザを選択すると良いかについては、次のポイントを検討して判断することをお勧めします。
① 申請人の学歴
⇒申請人が高卒の場合、技人国ビザの要件を満たさないため、企業内転勤ビザを考えます
② 今後も継続的な招聘を考えているか否か
⇒企業内転勤ビザは、技人国ビザに比べると、日本と海外の法人の関係性を証する資料を揃えるなど、申請に手間がかかる場合があります。しかし、継続した異動が予想される場合は、企業内転勤ビザの方が学歴等にとらわれないで広い範囲で人材の異動ができる可能性があります。
③ 日本での滞在予定期間
⇒ 企業内転勤ビザは、期間を定めた転勤という要件があります。日本での滞在期間がはっきりとしないが、長期滞在が予想されるのであれば、技術・人文知識・国際業務ビザを考えます。
・企業内転勤ビザで異動をさせた場合、給与の支払いは日本と海外、どちらの事業所から出さなければなりませんか
⇒日本の事業所からでも、海外の事業所からでも支払は可能です。ただし、いずれの場合においても、給与額は「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」でなければなりません。