「技能ビザ」とは――申請ができる職種の種類や条件は?
在留資格「技能」

技能ビザとはどのような在留資格か

技能ビザは、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」をする外国籍の人に許可される在留資格です。

典型には、外国人の調理師やコックなど、外国料理を専門にした料理人が主な対象になります。外国の料理店で経験を積んだ料理人が日本の専門料理店で働くといったケースです。

また、その他にも、外国特有の建築土木の大工、貴金属・毛皮の技師、パイロットなども技能ビザに含まれます。スポーツの監督やコーチ、インストラクターもこのビザの対象です。

技能ビザの申請にあたっては、学歴などの要件は必要なく、一定の実務経験のあることが必要です。

 

「技能」ビザで調理師やコックとしての活動を行う場合

日本にはアジア料理をはじめ、世界の様々な料理店があります。

技能ビザはこのような外国料理のお店で調理等にあたる外国籍の方を対象としています。ただし、料理を行うのであれば何でもよいというわけではありません。

ここでの料理は、入管法(出入国管理及び難民認定法)にかかわる扱いで、「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で,次のいずれかに該当するもの 」(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号))と、外国において考案されたものであることが要件として定められています。

そのため、日本料理店や日本の居酒屋などでは取得ができず、また、調理の補助業務ではこのビザは取得ができません。

また、技能ビザはお店への勤務が前提となります。自身がお店のオーナーシェフなどになる場合は、技能ビザのまま調理に携わることはできず、[経営・管理]など異なったビザへの変更が必要です。

料理人が技能ビザを取得するための要件

◇専門料理店での実務経験が10年以上あること
(外国の教育機関で調理や食品製造に関する科目を専攻した期間も含まれます)※ 実務経験のみで、学歴は要件にありません。専門の料理人としての経験が10年以上必要で、その立証がポイントとなります。※タイ料理人のみ5年以上の実務経験で取得できます

 

証明には、過去の勤務先から「在職証明書」を取得します。ケースによっては在職証明書を申請人の国で公正証書にした上で入国管理局に提出します。

10年以上の実務経験となると長いため、複数のお店で働いているケースも多くなります。記録をたどり、すべてのお店から証明書を取らなければなりません。

 

スポーツ指導者やパイロットなどその他の職種で「技能」ビザを取得する場合

料理人の他にも、省令で定められた、スポーツ指導者、パイロット、外国特有の製品製造者、ソムリエなども技能ビザの対象です。
細かく技能ビザの対象となる仕事と取得の条件をみてみましょう。

 

在留資格 「技能」調理師以外の活動

外国に特有の建築または土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指導監督を受けて従事する者の場合に あっては5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築または土木に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

外国に特有の製品の製造または修理に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造または修理に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

宝石、貴金属または毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

動物の調教にかかる技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削または海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

航空機の操縦に係る技能について1000時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法第2条第17項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの

スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間および報酬を受けて当該スポーツ に従事していた期間を含む)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの、または、スポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の 国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの

ぶどう酒の品質の鑑定、評価および保持ならびにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という)に係る技能について5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
(1)ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という)において優秀な成績を収めたことがある者

(2)国際ソムリエコンクール(出場者が1国につき1名に制限されているもの に限る)に出場したことがある者
(3)ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む)もしくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む)またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者

上記どれか1つの要件を満たし、給料が『日本人と同等以上』であれば「技能ビザ」の要件を満たします。

色々な職業が並んでいますが、まずは一番上の「建築技術者」にご注目ください。

近年、建築現場などで働く外国人を目にすることは珍しいことではなくなりましたが、そうして働かれている方の多くは「技能」ビザではありません。

国土交通省が公開している『建設分野における外国人材の受け入れ』という資料では、建設業に従事する外国籍人材116,789人のうち、技能実習生が70,489人(約60.4%)ともっとも多く、特定技能で働かれる方12,776人(約11%)と合わせ、7割以上の方がこの2つの在留資格を持っているそうです(2022年)。

「技能」ビザがあるのになぜ?と思ってしまいがちですが、「技能」ビザの要件の部分をよくみると「外国に特有の建築又は土木にかかわる技能」とあります。

つまり、同じ建築物を建てる場合でも、それが外国風の建物で、建築する際に特別な技術が必要となるようであれば、「技能」ビザが必要になるということです。翻って言えば、国内の通常の建設作業に従事することができない、ということでもあります。

そのほかについても、「外国特有の製品の製造・修理」や「宝石・貴金属・毛皮加工」、「動物の調教師」、「ソムリエ」など、かなり専門的な知識あるいは経験が必要な職業が並んでいます。

「技能」ビザの申請にあたっては、これらの要件を満たすだけの知識の習得や実績が条件になります。

 

採用するお店側が注意すること

就労ビザの取得というと、どうしても申請者(外国籍従業員)の経歴に目が向きがちですが、料理店等、雇用者側が問題となる場合もあります。

例えば、外国料理店が新たに料理人を雇用するため、実務経験を十分に満たした外国人調理師の認定申請をしたが不許可になった例がそれです。

ここでの問題は、その店で以前に雇用をしていた外国人調理師の報酬に問題がありました。このケースでは過去の賃金台帳の提出が求められていましたが、外国人調理師の賃金が一律に低く抑えられており、その合理的な理由が説明できませんでした。

技能ビザにおいては、日本人と同等額以上の報酬を受けることの他、会社の経営の安定性・継続性も審査の対象となります。過去の外国人雇用に問題点があったため、新たな外国人雇用が難しくなってしまったケースは多々あります。社会保険への加入なども含め、労務環境の整備には十分な注意が必要です。

〈技能ビザの取得において、実務経験以外にチェックする項目〉

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
雇用契約、請負契約などを結んだ会社の経営の安定性・継続性
過去に在留状況の不良がないこと
新規従業員の技能ビザ申請にあたっては、申請者の提出書類だけではなく、申請者の労働環境や雇用者側の採用実績にも十分ご注意ください。 
 

技能ビザ申請に関してよくいただく質問

・技術・人文・国際ビザの在留資格の中には ”技術” がありますが、”技能” と何が違うのですか?
⇒ 技術・人文・国際の在留資格にある“技術”は「学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力」で「技能」の在留資格は「個人が自己の経験の集積によって有している能力」となります。
おおまかに表現すると、技術・人文・国際の在留資格にある“技術”は大学などで習得した知識を活用した仕事にあたり、「技能」の在留資格は現場の経験から高度に練成され、体得された技といえます。

 

・いくつもの店舗で料理の修行をしており、経験が10年を超えていることは間違いありません。
過去に努めたお店の中には、既に閉店してしまって連絡がとれない店もあります。どうすればよいでしょうか?
⇒技能ビザにおいて、実務経験期間の立証は特に重視されるポイントです。立証は申請人側がおこなうため、当時の会社から直接の在籍証明書がとれない場合は、その他の間接的な証拠となる資料を使い最大限の立証を試みますが、許可に至るのは大変難しくなります。

 

・外国の料理はどのくらいの種類をつくれることが必要ですか?
⇒フルコースの料理を作れる技能を持つことが望ましいです。
そこまでのバラエティがなくても、その国独自の調理方法で行う料理等、容易に真似のできない本場の外国料理を提供できる水準であれば技能ビザ取得の可能性はあります。

 

・海外から購入した大型機材のメンテナンスに専門的な技量が必要で、現地の外国人技師を招聘したいです。可能ですか?
⇒日本にはない製品の製造に係る独特の機材であれば「外国に特有の製品の製造または修理に係る技能」を有する者として技能ビザ取得の可能性はあります。対象となる大型機材の特性によりますが、メンテナンス業務の内容がエンジニアに近いケースでは、「技能ビザ」よりも、「技術・人文・国際ビザ」での招聘を検討することが必要となってきます。

 

技能ビザは、その上手な活用によって、海外の優秀な外国人を雇用でき、日本人のみでは発想のできなかった新たな料理の開発や、より創意に富んだサービスの提供が期待されます。「許可が取れるか不安」、「実務経験の証明が難しい」、「技能ビザに該当するか分からない」など、お悩みでしたら、ぜひ、ご相談下さい。

無料相談

ビザの申請に不安がある場合は、まずは在留資格に詳しい行政書士に相談してみることをおすすめします。
早期に相談することで、問題点を把握し、ビザ取得の可能性を高めることができます。
当事務所は、神奈川県の東部を拠点にビザ申請の業務を承っております。
数多くある行政手続きの中でも、在留資格の申請は、お一人お一人の経歴や職歴等によって申請方法も異なり、許可に至るまでには様々なハードルがあります。
当事務所では、お客様のご状況を丁寧にヒアリングし、問題点を洗い出し、最適な申請プランをご提案いたします。
無料相談を行っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
ご相談のお申し込みは、①お電話での相談申し込み ②「お申し込みフォーム」からの申し込みの2つの方法があります。
※相談は予約制となります。