「技術・人文・国際」―もっとも取得者の多い就労ビザ―
本ページで紹介する技術・人文知識・国際業務ビザ (技人国ビザ) は、様々な就労ビザの中でも取得者が大変多い、もっともポピュラーなビザです。技人国ビザは、主に大学や専門学校などで学んだ専門知識を活かしたオフィスワークが該当します。
図解【技人国ビザの位置づけ】
技人国ビザの業種別の取り方ポイント
技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザに該当する仕事はたいへん幅が広く、職種ごとに在留資格の申請で注意すべきポイントが複数あります。そこで、よくご相談をいただく業種別にビザ取得のポイントをご紹介いたします。
技人国ビザそのものについて知りたい方は「技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザ――もっとも取得者の多い就労ビザ」をご参照ください。
図解【技人国ビザの要件まとめ】
技人国の取得要件の詳細は、「技術・人文知識・国際業務ビザを取得するための要件」をご参照ください。
IT企業
IT企業でも技術者としての雇用を考えているか、人事、総務などとしての雇用か、あるいは翻訳・通訳など語学能力に着目した雇用を検討しているかにより、要件は変わり、申請書の書き方も変わってきます。
IT技術者としての雇用
ソフトウェア専門、あるいは、ハードウェア専門、データベースやネットワーク、あるいはセキュリティなどIT企業もその業務内容は多様です。技人国ビザは、大学や専門学校で学んだことと職務内容との関連が必要なため、職務内容がソフトやハードウェアを取り扱うIT技術者として働く場合には基本的には情報に関連した単位の取得が必要です。
ただし、IT告示といって、申請人が「情報処理に関する技術または知識を必要とする業務に従事しようとする場合」には、資格試験合格による認定もあり、告示で定められた試験の合格者、及び、既に資格を持っている場合は、学歴・実務経験がなくても許可となる可能性があります。
詳しくはこちら⇒出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の技術・人文知識・国際業務の在留資格に係る基準の特例を定める件
理系と文系融合の仕事
ソフトウェアの開発では、理系プログラマーだけでなく、デザイナーや人文科学の知識を持つ者など、多くの知識が融合されて作られるものも多くあります。
たとえば、ITを駆使した新たな金融サービスの開発や、翻訳のソフトウェアや地図ソフトウェアの開発などでは、経済や人文科学の高度な知識が必要となり、そのために文系のバックグラウンドを持つ外国人の採用が必要となることもあります。
このような場合には開発をしようとしているソフトウェアの内容と、申請人のアカデミな背景を理由書で十分に説明して、学歴と職務の関連性が審査官に分かるように記載することがポイントとなります。
総務・人事・経理・営業・翻訳通訳などでの採用
これらの職種についても、具体的な職務内容と外国人本人の学歴との関連性が必須となることは共通です。
そのため、法律、経済、経営、マーケティングなどそれぞれの業務に即した専門知識を履修している必要があります。
ただし、翻訳・通訳の場合は、短大、大学(日本に限らず本国の短大、大学で可)を卒業していれば学部を問わず従事することができ、過去の職務経験も問われません。
飲食業
申請人の業務内容によります。
もし料理人としての採用であれば「技能」ビザを検討しなければならず、取得の要件が技人国ビザとは異なってきます。
また、ホール業務での採用はできません。(ホール業務は職務内容に制限のない身分系ビザか、資格外活動のアルバイトでしか従事できません。)
食材の調達を目的とした国際貿易や人事、総務、マーケティングなどであれば、申請人のこれまでの学歴、職歴との関連性を示すことで、技人国ビザの取得は可能です。
この場合、複数の店舗をもつなど、ある程度の規模を持ち、十分な業務量があることが必要となります。
技人国ビザの審査においては、年間を通じて十分な業務量があることの疎明も重要なポイントであるため、飲食店を1店舗運営している程の規模の場合、技人国ビザに該当する仕事が安定してルーティーンに発生する点について不安があり、実際、十分な業務量を確保できないことも少なくありません。
しかしながら、1店舗であっても立地の性質上、観光地であることなどで外国人の来客が大変多く、通訳業務をメインとした人材を採用したいケースも多々あります。このようなケースでは、来客者の国籍やその人数を疎明した資料を添えて、技人国ビザの申請を行います。
【関連記事】「技能ビザ」とは――申請ができる職種の種類や条件は?
教育業
外国人が母国語を日本人に教える仕事に就くには、大学・短大を卒業して学位を取得していることで、技・人・国の在留資格を取得することができます(技・人・国の中の国際業務に該当します)。また、学校で専攻した内容も問われません。
エンジニアや、総務など、技術、人文知識分野によるビザの取得要件よりも、要件が緩和されているといえるでしょう。
【母国語を教える場合に、技・人・国ビザを取得するための学歴・実務経験】
英会話スクールなどの語学教師は、技術・人文・国際ビザの「国際業務」に該当します。
国際業務は、技術、人文と許可基準が異なり、比較的要件が緩和されています。
国際業務を行う場合の要件(アかイどちらか)
ア. 学歴(大学等を卒業して学士以上の称号があること。学部は不問。)
イ. 語学教師としての実務経験が3年以上あること
ビザ取得においては、教える学校の種別もポイントです。
下記に簡単にまとめてみます。
民間の英会話スクール・語学スクールでの就労
教育業での外国人雇用は大手英会話学校の講師など、民間スクールでの採用が大変多いです。
この場合、経営母体の安定性は必要ですが、大学・短大を卒業して学位を取得していれば、専攻内容を問わず 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して働くことができます。(専門学校卒業の場合は、教育に関する科目の専攻が必要です)
個人で英会話教室を経営されている方が外国人講師を採用するケースも多々あります。
教育業は教える講師の指導スタイルや人柄が事業成功の成否が大きく左右されます。採用側は事業の実態を説明することと同時に、申請人の講師としての優秀さについて、経歴や実績を基に過不足なく説明を行い、採用の経営上の意義を説明することがビザ取得に重要です。
フリーランスの語学講師
外国人がフリーランスの語学講師として、複数の企業や個人客から業務を委託されて働くようなケースです。
フリーランスは個人事業主という扱いとなります。個人事業主でも技人国ビザの取得は可能です。
ただし、①事業活動の内容と、②事業の安定性、について申請人自身で明確に説明ができなければなりません。
この二つのポイントの説明には、顧客との契約書が基本的な資料となります。
契約書に明記された仕事の内容、契約の期間や報酬などが審査の材料となるため、契約書を作成することはもちろん、契約書の控えは間違いなく保存をしておきましょう。(ビザを更新するときも重要な資料となります)。
注意点:契約は 「日本にある公私の機関」 との継続的な契約が要件です。外国にある会社のみと契約をしている場合はその要件に該当しません。
学校法人での英語講師・アシスタント
私立、公立を問わず公教育の現場で行う英語教育 (小・中・高校生向けの英語教育) に携わる場合は「教育」ビザとなり、技人国ビザとは異なる要件が必要です。また、大学で教える場合は、「教授」ビザとなり、こちらも取得には異なる要件が必要となります。
ホテル等宿泊施設
インバウンドが盛況です。
外国人観光客へのサービス向上に、外国人従業員の語学能力や、幅広い国際感覚を背景にした営業力など、外国人の感性、能力を生かした採用はこれからますます増えてゆくと思われます。
企画からセールス、人事、広報、総務、施設管理とホテル業もその仕事は多岐に渡りますが、ハウスキーピングやベルアテンダント、ルームサービスなどの業務ではビザの取得はできません。
ホテル業での技人国ビザは、主に次のような職種で取得が考えられます。
フロント業務・ホテルの施設案内
来客した外国人観光客と直接のコミュニケーションが発生するフロントです。
日々訪れるたくさんの外国人と丁寧に、そしてミスのないやり取りが必要なフロント業務に外国人の母国語へのニーズは高く、現に、多くの外国人が雇用されています。
ビザの申請にあたっては業務量の説明がポイントとなります。
客室数、客室稼働率、外国人客の比率、季節ごとの来客者変動などの資料を基に、フロントの専従者として十分な業務量があることを説明します。
観光地の大型ホテルであればこの点の説明は十分に可能と思われます。
しかし、ホテルの規模が小さい場合や、観光地でない日本人客がほとんどのビジネスホテルなどでは、外国人の母国語能力を必要とするフロント業務が日常的に発生するとは考えづらく、フロントでの採用はなかなか難しいと言えます。
ホテルの規模が小さければ、必ずしも不許可になるとはいえません。
富裕層向けに高品質なコンシェルジュサービスを24時間、多言語で提供しているホテルなど、規模は小さいながら手厚いサービスを提供するホテルでは、職務内容と業務量の疎明で、技人国ビザ取得の可能性があります。
マーケティング、経理、総務、企画
集客拡大に向けたマーケティングや広報、宿泊プランの企画などもホテルの経営に欠かせません。
このような業務につく場合は、 卒業した大学での専攻科目と業務の関連性が必要となります。
専門学校を卒業の場合は、通例、専攻科目と業務との関連性がより細かく審査されますが、関連性が認められれば、就業が可能です。
貿易業
企業による海外取引と個人事業で輸出入を行うケースが考えられます。
海外商品の買い付け、海外パートナーとのやり取りなど、貿易業は外国人を雇用することの多い業種となります。
貿易会社のみならず、商社、メーカー、船舶会社、海運倉庫、など貿易に携わる会社は様々ですが、それらの貿易事務として勤務する場合なども比較的スムーズに就労ビザは取れます。
もちろん、大学や専門学校での専攻と業務内容との間に関連性があることが前提となります。
申請人が日本の専門学校卒業(申請人本国の専門学校の卒業は含まれません)の場合は、専攻した科目と業務との関連性がより細かく審査されるのが一般的なため、採用を考える企業側は、どのような業務を想定した採用であるか、より慎重な検討が必要です。
個人で貿易事業をしている事業主様から、本国から知人を呼び寄せて従業員にしたい、といった相談を受けることがあります。
会社組織でなく、個人事業主による申請でも、特段、問題はありません。 ただし、個人事業の多くは会社区分のカテゴリー3、または、4に該当するため、カテゴリー1、2 に属する会社に比べ事業の安定性、継続性についてはより慎重な審査がされます。
申請においては、新規に人員を雇う必要性や業務量について細かな説明を行うとともに、輸出入をしている具体的な商品、取引の実態について写真を添付するなど分かりやすい資料の提示もが必要です。
準備する申請書類は多く、審査期間も比較的長くかかることが予想されるため、招聘には事業展開に合わせた計画的なスケジュール調整が必要です。
コンビニエンスストア
多くの外国人がコンビニエンスストアで働いています。都心ではレジに立つ外国人を必ず見るといってよいでしょう。
コンビニエンスストアで働く外国人の多くは資格外活動によるアルバイトや(留学ビザ、家族滞在ビザ、就職活動で特定活動を行う外国人でも資格外活動としてアルバイトはできます)、身分系ビザ(日本人の配偶者ビザや永住者ビザ等)による就業と思われます。
コンビニのオーナー様よりアルバイトの留学生をそのまま店長として雇用できないか、といったご相談をうけることがあります。本人もやる気になっており、十分な給与も見込まれるものの、正社員としての雇用は大変ハードルが高くなります。
コンビニ業務はレジや品出しといった店舗内の業務が中心となるため、技人国ビザの要件である、「卒業した大学や専門学校で専攻した内容と業務との関連性」を見いだせない点がその理由の一つとなります。
コンビニエンスストア本部による採用であれば、総務、人事、マーケティング、商品開発など多くの職種が見込まれ、比較的スムーズに技人国ビザの取得が可能です。しかし、フランチャイズオーナーが経営する1店舗のコンビニでは、そのような業務が日常的に発生するとは考えづらく、外国人の正社員雇用はなかなか難しいのが現状です。
ハードルは高いですが、次のようなケースでは、コンビニで外国人のビザ取得が見込まれます。
多くの店舗を持つメガフランチャイジーが雇用主であるケース
店舗数の多いメガフランチャイジーでは、外国人アルバイトの採用対応や研修指導、管理業務としてのスーパーバイザー、その他、外国人の感性を生かした販売企画など、様々な技人国ビザに該当する仕事も多く発生すると思われ、ビザ取得の可能性があります。
観光地の中心等に店舗があり、外国人の来店が大変多いケース
日常的に多くの外国人観光客が立ち寄るような店舗では、外国人の母語を生かした接客、案内などは活気ある店舗の経営に必要不可欠と思われます。また、季節に合わせた発注も必要で、マーケティング業務も生じると思われます。
そのため、通訳やマーケティング業務を職務内容に取り入れた採用を行うことで、ビザ取得の可能性が出てくると考えられます。