就労ビザの全体像を詳しく解説します!
外国人が日本で働くには就労ビザが必要
外国人が観光などの短期訪問ではなく、日本に中長期に渡って在留して報酬を得る仕事をするには「就労ビザ」が必要です。
「就労ビザ」という呼び方は実は慣用表現で、正確には 「就労のできる在留資格」 といった言い方が正しくなります。ただ、「就労ビザ」といった呼び方は日常的に広く使われているため、本サイトでも簡潔に「就労ビザ」と表現をしたいと思います。
多くの種類がある就労ビザ
「就労ビザ」は、外国人が日本で行う活動に応じて細かく種類が分かれています。
例えば、外国人が日本の中学校で英語教師として働く「教育」ビザが必要となりますし、海外の新聞社に所属するカメラマンが日本のオフィスに配属された場合には「報道」ビザを取得しなければなりません。あるいは、熟練した外国の調理師が日本でコックとして働く場合には「技能」ビザが求められるなど、日本での活動内容に応じていずれか一つのビザを取得して在留をすることとなります。
また、「就労ビザ」は細かく就労形態が定められているため、働く場所や雇用のあり方によっては希望する活動が制限される場合もあります。例えば、「芸術」ビザを取得して在留するアーティストが、その活動を広げて、大学でデッサンの授業を担当しようとしても、「芸術」ビザでは、授業の担当はできません。大学で授業を行うには「芸術」ビザとは異なる「教授」ビザが必要となるからです。
以下は、ビザの種類と該当する職種や身分、活動内容をまとめた一覧表です。
ちなみに、もっとも保有者数が多い、「技人国」ビザとして知られる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格については、別途解説しております。併せてご参照ください。
「技人国」ビザ(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)の解説はこちら
図解:【在留資格(ビザ)一覧】
就労ビザの種類や要件は状況に応じて変更される
上では、日本国内での身分や活動に応じて在留資格の種類が分かれていること、それぞれに定められた在留期限や個別の取得条件があることを確認しました。しかし、これらは常に固定的なものではなく、状況や事情に応じて変更がされたり、認められたりすることがあります。
新型コロナウィルス感染症流行下における就労ビザの特例
もっとも身近な例で言うと、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が流行した際の対応が分かりやすいでしょう。
まだ記憶に新しいとは思いますが、COVID-19が流行した当時、「不要不急の外出」を控えることが推奨され、人びとの行動も変わったために勤務時間の短縮や雇止めを行う企業もありました。また、航空便をはじめとする海外の往来も著しく制限され、在日外国人の方にとっても不安で厳しい状況が続いていました。
このような事情の中、人道上の配慮などから、各種届出に猶予や緩和措置が取られました。
一例をあげると、ワーキング・ホリ デーで日本に在留する外国人で帰国が困難な者に対しては、特例で本来は更新ができない在留期間について更新を許可するなど、帰国困難者への在留期限を引き延ばすなどの措置がとられました。
過去には、2011年の東日本大震災発生時に、在留期間更新手続きや再入国等で特例措置が取られた例もあります。
このように、災害や疫病等、緊急事態と呼べるような状況においては、特別な猶予や緩和措置が取られることがあります。
留学生が取得できる新しい在留資格
技人国の業務と現場労働が可能な特定活動46号 (N1)
上述のような危機的状況だけではなく、経済社会の変化に伴い就労ビザの在り方は刻々と変化してゆきます。例えば、2019年に新設された特定活動のひとつである「特定活動46号」はその好例です。
これは、日本で留学中の外国人が大学・大学院卒業後に、留学で得た高い日本語能力を活用することで、技・人・国ビザの業務に加えて、サービス業務・製造業務への従事も可能とした在留資格です。
従来の制度では、大学や大学院を卒業・修了して技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザを取得した外国人は、学んだ知識をいかした専門職に従事することが求められ、マニュアル的な業務や、肉体労働を伴う現業に従事することは原則できませんでした。
それに対して、特定活動46号では、高度な日本語力を活かしつつ現場での仕事にも従事することが可能となり、外国人が働く際の新たな選択肢として注目されています。
出入国在留管理庁(旧・入国管理局)のガイドラインにおいても、特定活動46号は日本国内の大学や大学院を卒業・修了者向けの「就職支援」と位置付けられており、社会状況の変化を反映して設けられたものと考えられます。
なお、 特定活動46号については、別ページで解説を行っておりますので、そちらをご参照ください。
特定活動46号の解説はこちら
ビザ申請の難しい点 -書類を揃えたのになぜ不許可?
ここまで、在留ビザには日本での活動に応じて多くの種類があること、しかし、災害等の緊急事態や時流の変化によっても、特例が設けられたり、新しい在留資格が設けられたりすることを確認しました。最後に、ビザ申請においてよくいただく相談を紹介し、ビザ申請の難しい点を解説したいと思います。
業務内容や業務量の説明が不十分
よくいただく相談として、入国管理局で公表されている書類を全部揃えたはずなのに不許可になってしまった。理由が分からないといった内容があります。実際、お客様の申請書類を一つ一つチェックすると、理由書は丁寧に作成され、その他の書類も不備なく綺麗に準備されており、申請人の素行も全く問題がないことが分かっております。
このような場合、外国人が行う仕事の内容や業務量の立証が十分でないことが不許可の原因であることが多々あります。多いのが人文系学部を卒業した留学生がマーケティングや営業に就業するケースです。
申請書に業務内容を具体的に細かく記載したつもりでも、会社の規模や業態を考慮したとき、その仕事をメインに行う程の業務量があることや、年間を通じて発生する仕事であることについて、審査官を十分に納得させられる材料が揃っていないことが少なくありません。このようなケースで、もしも、業務量に関して追加資料を求められ場合は、具体的な資料を提出して証明をすることで許可に近づくと言えます。
例えば法人営業職であれば営業先リストなどが参考資料となるでしょうし、経理であれば日々作成する書類のサンプルなどが参考資料となるでしょう。
これらを整理して明確に提示することが必要です。
上記は一例となりますが、入国管理局で公表されている書類はあくまでも最低限のものとなります。個々の状況や経歴に応じて必要な書類は異なります。
ビザ申請において許可を取る難しさの一つは、このように個別に異なる状況に応じた立証を申請者側が行わなければならい点にあります。
入管動向のキャッチアップが必要
ビザ申請の難しいもう一つの点は、許可・不許可の基準が固定したものではなく、少しずつ変化をしてゆく点にあります。国際関係や社会情勢等の変化に伴い、半年前には許可となって事案が同じ事案が不許可となることは珍しくありません。
そのため、正式に公表されている情報もちろんのこと、最新の事例から入国管理の傾向を把握することも必要です。このようなキャッチアップを個人で行うのは難しく、また法人であっても入管動向を常にフォローするには専任の担当者を置かないとなかなか実現のできないことと思われます。
このこともまた、在留ビザの申請を難しくしている理由のひとつです。
ビザ申請は、在留資格の変更や更新等含めれば、早い場合は数ヶ月、永住者でも数年に一度は行わなくてはならない手続きです。
日常的なことのように思われるかもしれませんが、外国籍の人からすれば、その都度、申請が受け付けられなければ仕事も生活も失いかねないという不安感を伴うイベントにほかなりません。
働く側・生活する側は安心して日本で働きたい・生活したいと思っていますし、雇用する側も社員に安定した環境で働いてもらいたいと考えるでしょう。このような不安や心配を軽減する意味でも、お困りの際は、是非、弊事務所にご相談いただければと思います。